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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 64-15

鎮『……ふん』
 
 予想通りだと鎮は思った。
 炎座と冴牙はきっと功を自分のものだけにしたがる。
 だから仲間を呼ぼうとはしない。
 
鎮『それに……』
 
 突き出される腕の内側から自らの腕を入れてガードし、攻撃を弾いていなす。
 剛の力を弾くことで受け流しているのである。
 嵐のようなパンチの連続を頭を振って避けて、避けきれない分は腕で弾いてやり過ごす。
逆にいくらこちらが攻めに転じても、鋼の肉体がまるで攻撃を受け付けない。
 どちらもクリーンヒットは未だナシだ。
体を回転させ、渾身の力を込めた蹴りを入れたが、片手でその足をつかまれてしまい、吹き飛ばされてしまった。
幹に激突し、地面に叩きつけられ、バウンドしてようやく止まる。
衝撃で刀が手元から抜けて離れた場所に突き刺さった。
 

▽つづきはこちら

炎座「わしの拳はこんなものではないぞ! わはははっ!!」
鎮『それに……』
 
 起き上がって身構えると、猛然と遅い来る炎座の燃える腕が迫ってきていた。
 
鎮「!」
 
 切った口から血が滴るのを拭う間もなく再び身をかわす。
だが相手の攻撃は更に速度と手数をあげてきて、段々といなすのが難しくなってきた。
何度も炎座の腕が無造作に生える木々にぶつかり、その度に炎が無残に焼き焦がした。
ただ火が着くだけではない。
一瞬にして触れた部分を灰にしてしまうのだ。
もしあの手につかまれでもしたら、とんでもないことになる。
腕にばかり気をとられているわけにもいかない。
炎座はその巨体からは想像できない身軽さで手足、体全体を使った体術を得意とする肉弾戦のエキスパートなのである。
木の上に逃げても軽く追ってくる。枝を大きくしならせ、葉を落としながら。
 
炎座「ぐはは、むわぁてぇぇい!! 逃げても無駄だぞ、シィズカァ! その細首、へし折ってくれるわ!」
鎮「…………」
炎座「逃げ回ってるだけでは仕方あるまい! どうした、根性なしめ! お前はオカマか!? 悔しければ向かって来い!!」
 
 挑発をしているのか、罵声を浴びせたいだけなのか、勝利を疑わない彼は気持ちが良さそうである。
 
鎮『誰が筋肉ダルマに付き合ってやるものかよ』
 
 鎮は地上に降りた。
 追って、炎座が飛び降りてくる。
 体勢が整わないうちに鎮の何倍あろうかという大きな影が覆いかぶさってきた。
 
炎座「ふははははっ! ここまでだ、おシズ! 掟を破ったお前を処刑するぅーっ!!」
鎮『それに……だ』
 
 転がって避ける。
 今の今、いたまさにその位置は、もうもうと黒い煙が立ち上っている。
 
鎮『炎の明かりで他の連中に見つからないように抑えているな、力を』
 
それに。また鎮は思った。
 後ろ後ろへと追い詰められて、どんと背中に木が当たった。
 目前に炎に包まれた大きな拳が迫った。
 先程から繰り返す、同じパターンである。
 小柄を利用して、素早く鎮は膝を折ると縮こまって攻撃をやりすごし、相手の腕が伸びきったところで立ち上がる勢いに乗せて炎座の顎の下を短刀で貫いた。
 
炎座「がっ!?」
鎮「それにさ! 単純なんだよ、アンタ!!」
 
 懐から抜け出して、先程、手から抜けた刀を拾い上げた。
 逃げ回って、回りまわって元の位置まで戻って来ていたのである。
 
炎座「ぐおぉぉぉ!!!」
 
 顎に深々と突き刺さった短刀を抜いて、炎座は雄叫びを上げた。
 
鎮「顎の下まで鍛えられないだろ、筋肉ダルマ殿?」
 
 傷を負いながら、猛然と突っ込んでくる敵の頭上を飛び越えて、背後を取る。
 
鎮「これで最後だ、炎座!!」
 
 地を蹴り、全体重をかけて首に刀を打ち込む。
 が、しかし。
 
鎮「!?」
 
 弾き返された。
 何事かと見れば、筋張った首の筋肉が盛り上がっている。
 
鎮「…………嘘……」
 
 まさに全身鎧だ。
 
鎮「なんて奴……」
 
 呆れて距離を取った。
 
炎座「おのれ、おのれ、小童ぁっ!!!」
 
 口から血の泡を撒き散らしながら、野獣のように吼えた。
 やたらめったら腕を振り回してそこらを火の海に変える。
 茂みに身を隠し、クナイを使って地面を掘り返す。ほぐした土を手にひっつかむとさっと立ち上がる。
 
炎座「ぞごがぁっ!!!」
 
 炎の蛇が襲い掛かってきた。
 同時に鎮は、怒りの形相に向かって、土を投げた。
 
炎座「むおっ!?」
 
 目潰しを食らった炎座は吼える。暴れる。すでに近寄るのも難しいほどに。
 
鎮『……そろそろ、頃合か』
 
 木の上に飛び上がり、様子を見ることにした。

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