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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 64-14

 駆け出そうとした二人の足元に影が映った。
 光の魔法により浮き出された第三の影が。
 
二人「!!」
 
 それぞれ横に転がって、上空からの攻撃を避ける。
 
人形「わぁ、さすがはリッくんとクロエ。よく避けるでござるな。で☆も! 逃げてばかりでは埒が明かないでござるよー?」
 
 地面に深々と突き刺さった刀をひっこ抜いて、人形はまた可愛いポーズをとった。
 
リク「クロエ!」
クロエ「うん!」
リク「名案があるんだ!!」
クロエ「奇遇ね、私もなの!」
 
二人、声と足をそろえて……
 

▽つづきはこちら

リク・クロエ「それっ、にっげろー!!!!」
 
 人形、ムリ。
 人形、コワイ。
 薔薇の騎士……に将来なるはずの二人は尻尾を巻いて逃げ出した。
 
 
 その頃、氷鎖女たちは掟破りの鎮を追っていたが、暗い山の中で見失っていた。
 
初「冴牙が遊んでおるからこんなことに!」
冴牙「るせーなァ。偲が俺の邪魔すっからいけねーんだろが」
初「偲のせいにするでない! そもそもお前様が……」
悟六「今から言っても仕方あるまい。鎮のあのケガではそう遠くまで逃げられまいよ。その辺で身を隠しているのが精一杯のはず。手分けして探すぞ」
 
 仲裁に入った悟六に偲が反論を唱えた。
 
偲「……手分けはせぬ方が良い」
炎座「何をビビッておるのだ、偲よ。相手は冴牙に痛めつけられて半死人ぞ。今度はお初とて片手でひねれるわ」
 
 それを炎座が笑い飛ばして、反論は軽く流されてしまう。
 
悟六「見つけたら、笛で互いを呼び合う。時間は丑の刻まで。それまでに見つからねば一度戻る。……それで良いな?」
初・冴牙・炎座「承知!!」
偲「…………」
悟六「散ッ!!」
 
 それぞれの方向へ別れる。
 このときを待っていたと、闇に身をうずめた鎮は彼らをまずはやり過ごし、元の野営地に戻った。
 放った武器を取り戻すためである。
 すでに焚き火も消されて辺りは闇に包まれている。
 
鎮「くそぅ。ワカメの奴……好き勝手しやがって……肋骨がイカレたわ」
 
 踏みつけられた折におかしな方向にひねって筋を違えた足を引きずり、再び野営地を離れた。
 グズグズしていては、中の誰かが元の場所を見回りに来るかもしれない。
 自分が出て行って気を引いて、すぐに人形を繰ってリクとクロエを救出するつもりだったが、偲の警戒だけがなかなか解いてもらえずに時間を食ってこのザマだ。
 危うく本当に失神してしまうところだった。
 しかし、逃がした二人が無事ならば、もう足枷はない。
 
鎮『ヤツラ……しっかと逃げてくれたろうな? 戻ってくるなどと愚行に至らなければよいが……』
 
 これから戦闘開始というところだが、彼らがいては邪魔である。
 逃がした意味がなくなってしまう。
 胸元を少し広げて、胸にある封印の跡をしげしげと眺めた。
 それはいつの間にか赤い蝶を模っていた。
 
鎮「………………あにさま……」
 
 魔法は唱えられないことはない。
 痛みを伴いはするが。
 それよりもっとこの印は別の効力を発揮しているなと鎮は思った。
 
鎮『だって…………こんなに痛いんだ……………………胸が……』
 
 ずきんと痛んだのは、身体ではない。
 心だ。
 蒸し暑い夜。
 ここにこれから血生臭さが加わる。
 じめっとした嫌な夜だ。
 転げまわってすっかり乱れた髪が顔にはりついて鬱陶しい。
 結ぼうと思ったが、すでに結んでいたリボンはなくなっていた。
 生徒たちからもらった物だったのに。
 背後で草を踏む音がした。
 振り向かなくても正体はわかった。
 踏んだ草の音で体重がかなりあることを察知したのだ。
 
鎮「一番に死ぬるは、……お前か、炎座」
 
 背を向けたままで硬い声を向けた。
 
炎座「ぐははははっ! よーうわかったな」
 
 鎮が鍔を持ち上げて刀を引き抜く前に、攻撃が飛んできた。
 ぱっと跳んで木の幹に足をつく。
 炎座の拳は大きく空振りをし、風を巻き起こした。
 その恐ろしい勢いのまま、着地点にも豪腕を振るってくる。
 もちろんそこをすでに蹴っていた鎮は、空中で回転して足場の悪い山の斜面に降り立った。
 
鎮「……ちぃ。馬鹿力め!」
 
 驚いたことに敵の拳は木の組織を破壊して、幹にめり込んでいた。
 冗談ではない。こんなものを食らったら、一発で骨を持っていかれてしまう。
 
炎座「これだけではないぞ、我が炎の力、とくと味わえ」
 
 ボッ。
 炎座の腕に炎がからみついた。
 
鎮「その炎の明かりで仲間を呼ぶというか」
炎座「いいや、その必要はない。貴様のような童(わっぱ)、わし一人で充分よ!!」
 
 不敵な笑みを浮かべ、続けさまに炎の拳を放ってきた。

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