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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 64-11

冴牙「今夜はどうして遊ぼうかァ、おシズゥ。また口に蛇でも突っ込んでやろうか? それとも……」
 
 血走った目を向けて、胸倉をつかみ引き寄せる。
 
冴牙「俺ァ、お前の泣く様が好きでよ。興奮すんだわ。だからこんなんなっちまった。若けぇ女や子供の身体バラす時の絶望に彩られた悲鳴がさ、俺をたぎらせるのさァ!」
 
 虚ろになった金色の眼を覗き込んで満足げに笑い、熱い息を吹きかける。
 
悟六「また冴牙の野郎、始まりやがった」
 
 呆れて悟六が肩をすくめた。
 こうなってしまうと欲求が満たされるまで暴虐の限りを尽くさなければ収まりがつかない。
 下手に止めに入れば、仲間にまで危害を加える。
 裏を返せばこの徹底した残虐性が彼の強さともいえた。
 

▽つづきはこちら

初「もうさっさとトドメを入れましょう、悟六殿! 見るに耐えませぬ」
悟六「いや、ああなると途中で止めると見境なくなるぞ」
 
 そう言って人質の二人を見やる。
 この分では、逃がしてやるといったものの、あの二人も冴牙の欲望を満たす餌食となろう。
 鎮を解体した後はその興奮からまた次の獲物を求めるに違いない。
 それもおあつらえ向きに片方は稀に見る美男子である。
 陰の妖しい美を誇る鎮とは真逆の、まるで陽の光を散りばめたように燦然と輝く青年。
 どちらかといえば幼女趣味の冴牙がどう反応するかはわからないが。
隣の少女の方は当然、危ういだろう。いかにも彼が好みそうな、しとやかな顔立ちをしている。
 
炎座「わしはわからんでもないがな。シズはしかしべっぴんに育ったものよ。気味が悪いくらいでな。ぶち壊して人なのかどうか確かめてやりとぅなる」
 
 がははと大きく肩を揺すって炎座は笑った。
 
初「ちぃ」
 
 明らかな軽蔑の眼差しを送って、初は顔を背ける。
 
初「せめてこの女子くらいは逃してやりませぬと、約束違えたと知ればシズが反撃に移りますぞ」
炎座「その頃におシズは息をしておらぬ。していたとしても四肢がのぅなって動けもせんわ。ぐはははは!」
初「………………」
 
 ちらりと人質を見やってこっそりと偲に助けを求める。
 
初「……逃してはやれまいか、偲」
偲「………………」
初「偲」
偲「………………」
初「偲!」
 
 返答がなく、やがて諦めたように目を伏せる。
 初は女でこの中では一番立場が弱く権限もない。
 どうにか公爵の花嫁を逃したようにこの無関係な二人の若者も助けてやりたかったが、それはできそうもなかった。
 男衆が鎮を見世物としている間に、初は人質の側に座ってそっと耳打ちをする。
 
初「氷鎖女と関係ないそなたらまで巻き込んで済まぬことをした。おシズが息絶えたら、縄を切る。そしたら逃げなされ……カタキを討とうなど思わずに身を守ることに専念をしや。そなたらでは我らに歯が立たぬ。実力の程は養成所で偲が調べ済みじゃ。我らも薔薇の騎士団とやらに小手調べとしてちょっかいを出したが、西の国は大したことあらぬ……」
クロエ「!」
   『まさかこの人たち……』
 
 つい近日、見回り中の薔薇の騎士団小隊が正体不明の敵数体に全滅の憂き目に遭わされたと聞き知っていた。
 兄の部隊ではないかと気を揉んだから確かである。
 幸いといっていいものか、ガーネット小隊長代理が預かる部隊ではなかったが、小隊が丸ごと消し去られるなどあり得ないことである。
 魔物の仕業とされていたが、まさか彼らであったとは。
 
初『どうせ我らから逃げ切れぬだろうが、それでも捕まったままよりはマシであろう』
 
 偲の目に気がついてあわてて人質から離れる。
 
クロエ『この女性(ひと)……戦いたくはないんだわ、本当は……なんとか説得に応じてくれないかしら?』
 
 クロエは初を頼みに話しかけてみたが、困った表情を浮かべるだけで取り合ってはくれない。
 
初「おシズの命は助けられぬ」
クロエ「何故ですか!?」
初「おシズが死ぬか我らが滅びるしかない」
クロエ「双方、手を引いて並び立つことはできるはずです」
初「それができるのなら、初めから我らはここにいない。偲が傷つくこともなかった。我らはどうしても……おシズの首を持ち帰らねばならぬのじゃ。そなたら外の人間にはわからぬことよ。それも西の人間などにはな」
 
 それきり、いくら問いただしても口を開いてくれなくなってしまった。
 リクはといえば、色を失ってただ目の前で行われている暴力劇を傍観している。
 
冴牙「ヤッベー。イヒヒッ。またおっ立っちまいやがったァ! 切り刻むのを想像するだけで俺ァよ! ああああっ! おかしくなっちまうんだよォ!!」
 
 膨張した股間を押えてうずく快感に耐える冴牙。
 今まで殺した娘や子供の惨殺場面を思い描いているのだ。
 彼は血を見て心地よい刺激を受ける種類の人間である。
 イタズラに傷つけて殺した女の遺体と身体を合わせるような男だ。
 その心はすでに野獣といえよう。
 あまりにも微かで誰も気がつかなかったがぴくんと偲の眉が跳ね上がった。
 ここにきて初めて。
 冴牙が快楽を求めて帯を解き始めるとさらに表情が険しくなった。
 悟六はあきれ返り、初は顔をそらし、炎座は腕を組んで笑っている。
 
リク「ふっ……ざけっ……!」
 
 呆然としていたリクがにわかに歯を鳴らし、怒りのために震えた。
 縄を断ち切ろうと力に任せて身体をよじる。
 
クロエ「痛いっ!!」
 
 同じ縄で縛られているクロエが思わず声を挙げる。
 
冴牙「よぉよぉ! 美形のニイチャン、カワイ子チャンが痛いって泣いてるぜ? 俺ァ、痛みに耐える女もそそるけどなぁ」

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