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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 61-8(改)

リク「わーあ……」
アン「わぁ……」
  『でもよかった。先生が気を使ってくれて』
 
 そんな様子を曲がり角から観察する4つの顔があった。
 リクとアンの友人たちだ。
 
ジェーン「あー、もー。リッくんたらどーゆーつもりぃ?」
カイル「空気読めないやっちゃなー、相変わらず」
クレス「空気の読めない度で言えば、お前も大したもんだぞ、勇者」
モーリー「リクくんが先生にラブラブし過ぎるんだよねぇ」
クレス「お父さんと同じ民族だからだよ」
   『きっと……懐かしくてしょうがないんだ』
 

▽つづきはこちら

 リクの家族がどうだとか話されたことなんてないけれど、ただ、父親がヒサメと同じ国の人だったから混血なんだという説明は聞いたことがある。
 自分と同じで来ない手紙。
 気をつけていればわかる、過去形の口調。
 彼の家族はこの世にいないのだ。きっと。
 だから、彼は寄りたがる。父と同じ匂いのするヒサメに。
 保健医ミハイルに特別目をかけられているクレスは、お陰でだいぶ、大好きな祖母を亡くした傷が癒えてきている。
 同じようにもっとヒサメもリクに優しくしてやったらいいのにと思うのだった。
 
クレス「ヒサメのヤツ、冷たいからな……」
 
 目に見えたわかりやすい優しさなど示してくれることがなく、いつも釣れない、何を考えているのかわからない。
 2年が過ぎて3年目に入ったというのに、未だに顔も知らない。
 ヒイキをしない。平等であることは好ましいけれど、必死に追いかけているリクの気持ちを推し量れば、痛いくらいだ。
 ミハイルだったらもっと優しい。ヒサメだってあともう少しくらいわかってあげたっていいのに。
 二人を比べてみても意味のないことなのに、クレスはヒサメが恨めしくなった。
 
ジェーン「しょーがないわねぇ。まだ恋人って実感沸いてないみたいだし、お互い」
カイル「リクのヤツ、女と付き合ったことないから、どーしていいかわかんないんじゃん?」
クレス「お前、あるのかよ」
カイル「ナイ!」
 
 疑わしげな目を向けると自信満々にカイルが応える。
 
クレス「……やっぱり」
 
 リクとアン、氷鎖女兄弟が別れて別々の方向に歩いてゆく。
 4人の友人ズは当然、リクとアンを追った。
 氷鎖女兄弟と何気ない顔ですれ違う。
 
 
 その日の夜。
 教員専用宿舎内の鎮の部屋。
 
鎮「あにさま、学徒たちと馴染もうとしなくていいから」
 
 本日中もすれ違う人々に手を振りまくりだったの偲に半ばあきれ返った鎮が釘を刺した。
 
偲「…………」
人形「一応、身内がお世話になってますー的な?」
 
 人形を揺り動かしてしゃべらせる。
 
鎮「……いいから。余計なコトしなくて」
 
 首を突き出して、付き合いよく人形に対して応える。
 
偲「…………」
人形「ちぇー。つまんないのー」
鎮「シズはあまり目立つのが得意ではござりませぬ。あにさまのお陰で笑われていると思うと、恥ずかしゅうて、針山に正座させられている気分でござる」
 
 ほぼ仮面といえる額当てを外して、頭を軽く振った。
 兄の前で顔を隠す必要もないので部屋では堂々としたものである。
 この額当てをするようになって3年近くだが、毎日装着して慣れているとはいえ、やっぱり外していた方が楽なのだ。
 
偲「…………」
人形「その格好も額当ても目立つと思うが」
 
 額当てを手にとって眺める。
 
鎮「それはよいのでござる。もしものためだから」
偲「もしも?」
鎮「もしも」
 
 問い返されてうなずく。
 わざわざ毎日、奇抜なスタイルで通しているのは正体を隠すためにわざとだ。
 そのもしものためがおかしな方向に流れて、架空の少女・ナツメなんかを演じる羽目になるから余計に外せなくなってしまったワケだが。
 迷惑甚だしい話である。
 
偲「…………」
鎮「てゆーか、どーしてそのヘタクソな人形を使って話すの? そんな旧い物……シズは恥ずかしゅうございます」
 
 帯を解いて素早く白い寝巻きの着物に着替える。
 この倭国風の衣類をどうして手に入れているか不思議に思った偲が数日前に尋ねたが、これらは自作だという。
 まったく手先の器用な弟である。
 ローゼリッタに来る前は鎮だってこちらでいう「普通の格好」をしていたので、最近になってから到来したマイブームが倭国風味なだけなのだが、母国の匂いのする物に触れていたいという強い想いからこういった真似事をするのだろう。
だから行きつけの骨董品屋に足しげく通ってなかなかお目にかかれない倭国製の品を探すのだ。
 郷に入れば郷に従えということわざにトコトン逆らったヒネクレ者である。
 こんなところから、それほど望郷の念が強いのだと赤の他人からであっても理解出来るほどだ。
 
偲「…………」
人形「ヘタクソ言うな、鎮のバーカ! おシズは偲の代理人でござる」
鎮「何が代理人か、まったく。ヒトの名をつけくさって…………」
 
 ブツブツと不平を鳴らす。

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