HOME ≫ Entry no.927 「レイディ・メイディ 61-7」 ≫ [933] [932] [931] [930] [929] [927] [926] [925] [924] [923] [922]
レイディ・メイディ 61-7
2008.08.21 |Category …レイメイ 61話
けれどお兄さんだって負けてはいなかった。
鎮「……と、ここまではよいだろうか」
説明にひと段落ついた鎮の背後に気配があった。
いつのまにか髪型が2つおさげになっている。
鎮「………………」
視界の端にまたしても踊る影。
縛ってあった縄が何故か足元に落ちている。
いつのまにコツをつかんだか。とんでもない兄だ。
▽つづきはこちら
鎮「…………あにさま」
偲「………………」
鎮「おとなしゅうしていて下されとお願いしておりまする。縄から抜け出ず、踊らず、シズの髪で遊ばず、学徒共に手を振らず、どうぞ、おとなしく」
再び縄で巻いて、今度は教室の窓から逆さにブラ下げて、放置。
鎮「えーと。どこからだったか。そう、質問は…………」
言いかけてまた止まる。
リクとクレスの間に無理やり収まって、手を挙げている兄がいたからだ。
気づけば、彼らの間にいるハズのカイル少年の姿がない。
足早に窓に寄ってみれば、案の定。
兄の変わりにカイルが可哀想なことになっていた。
カイル救出に生徒たちを促して、
鎮「あにさま」
偲「………………」
鎮「刀の錆になるのとぉー、おとなしくしているの、どっちが…………いーい?」
始めは明るく猫なで声で。最後は低くドスの利いた声で。
……怒った。
めったに怒らない、あの鉄仮面が怒った。
さすがの兄も渋々席を立ち、初めにあてがわれていた椅子に戻る。
すごすごと。
波乱の?授業が終了すると兄弟はすぐに教室からいなくなってしまう。
ステラ「なーんかスゴイお兄さん」
シラー「やっぱりバカの兄弟はバカなのね」
ジェーン「私、かなりウケたぁー♪」
アン『……リクくん……』
皆がヒサメ兄の奇行について話をしている間もアンの頭の中はリクでいっぱいだ。
カイル「ありえねーよ、あの人!! 俺を身代わりにしやがった!!」
リク「ははっ。構われたくてしょーがないみたいだね、お兄さん」
クレス「まぁ、久々に会ってはしゃいじゃってんじゃないの?」
カイル「冷静に分析すんなっ!!」
犠牲になったカイルは当然、カンカンである。
まったく恋人同士に見えないリクとアンがくっついて一週間。
初めのよそよそしさが少しずつ解消されてきたところだ。
授業が終れば合流して一緒に食事をしたり、図書室で勉強をしたり、自由時間には散歩をしたりとようやくそれしくなってきたものの、相変わらずアンはジェーンとモーリーに強く押されないと行動が取れないし、リクはリクですぐにカイルとクレスのところに収まって追い出されるを繰り返している。
廊下で氷鎖女兄弟と出くわし、
鎮「お」
リク「あ」
偲「…………」
アン「…………」
鎮、リクとアンを見比べて何度かうなづいた。
鎮「そか。うん」
リク「え、あ、うん……」
何だか言葉がないのにどちらも承知したようだ。
相手が何を言わんとしていたか。
鎮「……よかった」
リク「…………うん……まぁ……」
鎮がほっとしたように言うのに対して、リクはついと目をそらして曖昧に答える。
偲「…………」
アン「……?」
リク「明日の日曜ですけど、先生はどちらに?」
鎮「考えておる」
1週間に一度は自宅に寄ってメイディアの様子を見に行くことになっていたが、兄が一緒では困ったものである。
衣食住を共にして兄を少-しだけ信用し始めていた鎮だったが、メイディアのことを思い返すとまたまた疑う心が芽生えてくる。
兄がダンラックとつながっていたら? メイディアが生きていると見破っていて、取り返そうとしていたら?
全ての可能性を捨てきれずに明日を迎えようとしている。
メイディアには水晶で連絡を取って、我慢してもらうしかないだろう。
もちろん、連絡を取るときには兄から離れなければならず、念には念でニケに一時的に預かってもらうことにする。
リク「俺たち、その辺をフラフラするだけの予定ですけど、ご一緒にどうですか?」
偲「…………」
人形「ホントに? 拙者も行ってもいい?」
アン「えっ!?」
人形が大喜びで返事をするとアンがぎょっとなってリクの方を向く。
せっかく二人だけの休日なのにどうして先生まで呼ばなければならないのだろう。
けれど嫌だと言い出せずにヒサメ先生の方に視線を送っていると気づいたのかそれとも始めから来るつもりがなかったのか、鎮が首を横に振った。
鎮「ダメでござるよ、あにさま。このー……あのー……これらはアレでござる。我らは邪魔者というか、うんと、あの……」
リク「あ、いや、邪魔なんてそんな……」
アン『邪魔―! 先生、邪魔―!』
アンから放出される、ついてこないでオーラをいち早く察知した偲は人形を操って言った。
偲「…………」
人形「シズカ、邪魔大好き☆」
鎮「…………」
リク「…………」
アン「…………」
シーン……
鎮「…………ま、そのようなワケだから。二人で仲良ぅするでござるよ」
一瞬の間に何が起こったかは、あえて追求しない。
またしてもお兄さんが足元で痙攣して倒れているから。
鎮の拳からぷしゅうと煙。
お兄さんの頭にタンコブ。
状況証拠は充分だ。
PR
●Thanks Comments
●この記事にコメントする
●この記事へのトラックバック
TrackbackURL: