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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 60-14

 その根拠は、不思議と氷鎖女の子らが人面瘡さえなければ見目に麗しいという点からだ。
 氷鎖女の子を通して、元凶となる女が愛されたがっているのではないかと解釈したのだ。
 ところがだ。
 せっかく綺麗に生まれついても、それを台無しにする不気味な人面瘡がある。
 それだけならば、まだ隠せばいい。
 心の広く優しい者ならば、その美貌にどうしようもなく惹かれる者ならば、醜い瘡ごと愛することもできるだろう。
 また哀れなこの子を愛そうと努力した親兄弟もいただろう。
 しかし、彼女らは生ける者が忌むべきどす黒い負の渦を常に抱えており、それが人を遠ざける。
 問題は不気味な瘡に加え、沈殿した障気なのだった。

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レイディ・メイディ 60-13

 氷鎖女一族の呪いは解き方があって、ないようなもの。
 昔々、それはそれは美しい姉妹がおったそうな……
 そうやって語り継がれてきた昔話はめでたしめでたしのお話ではない。
 おどろおどろしい、愛憎の物語なのだ。
 
鎮「当てがあるならば、こんなにも苦しみはしませぬ」
偲「…………そう……だな……」
 
 呪いの元凶となった双子は実在し、性格はまるで反対だったが、たいそう仲の良い姉妹だったという。
 ところが二人が同じ男を愛したことから、悲劇の幕は上がる。
 男は美しい姉妹の間を行ったり来たりしていたが、とうとう慎ましくおとなしい妹と祝言を挙げることになる。
 恋に破れた姉は心に傷を負いながらも身を引き、妹の幸を祝った。

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レイディ・メイディ 60-12

 再会が穏やかなものであったなら、自分だってこんなに食い下がったりはしない。
 そのくらいはわきまえているつもりだった。
 先ほどの様子が気になるのか、やがてクロエとフェイトも追いついて来る。
 保健室に舞台を移してまたやりあっていたら大変だ。
 最後に見た先生の様子ではそれはないとは思っても。
 二人も同じように考えているに違いなかった。

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レイディ・メイディ 60-11

偲「………………」
『…………似てない……』
 
 成人した弟の素顔と初めて直接対面してやっぱりと納得する一方で少し驚いた。
 一目見て、いやに小さいなという印象は持ったが。
 それにしても。
 子供の頃から似てないと思ってはいたが、大きくなれば双子であることだ。
 少しは似てくるのかと思ったら。
 
鎮「弱み? ……いいえ、あにさま」
 
 ややあって、鎮の、猫を思わせる金色の眼が愉快そうに細められた。
 

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レイディ・メイディ 60-10

何かを考えていたが、思い切ったように兄に向き直り、母国語で語りかけた。
 
鎮「あにさまが何を考えておるや知れませぬ。……が。シズが戻るまでどうかおとなしくしていると約束して下され」
 
 先程の狼狽した様子はすでになりを潜めている。
 ……表面上だけは。
 
偲「………………」
鎮「もしもこの敷地内の何かが、ただ一つでも失われるようなことありますならば、シズは全力を持って貴方を八つ裂きにしてくれましょうぞ」
 
 どっかと椅子に腰を下ろし、傷口を出すために上半身の服を脱いでいる兄を見据える。
 疑いを晴らしたわけではないと警告しているのだ。
 

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レイディ・メイディ 60-9

 現場では、傷口を押さえもせず流れる血をそのままに、偲が静かな声でこう告げていた。
 
偲「甘く見てなどいない。ただ、斬りたくばそれもいいと………………思っただけだ」
鎮「……………………」
 
 力なく、弟がひざを折る。
 隠れていたのを忘れ、クロエがぱっと駆け出した。
 
クロエ「回復魔法を!」
フェイト「あっ、オイ」
リク『………シズカ……』
 
 後に続く2人。

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レイディ・メイディ 60-8

鎮「と、その前にあにさま、ととさまとははさまは御健勝か?」
偲「………ああ」
鎮「それを聞いて、鎮も安心致しました」
 
 二人が一定の距離を保ったまま何か話をしているが、追って来た3人には、距離があり過ぎてよく聞き取れない。
 近くにいたとしてもクロエとフェイトには馴染みない言葉なので無意味である。
 
鎮「しかし、ととさまもかかさまも見知らぬ西の大地で」
リク「……見知らぬ…西…の……」
 
 リクは口元の動きから言葉を読み取ろうと必死に目をこらしている。
 

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