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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 60-13

 氷鎖女一族の呪いは解き方があって、ないようなもの。
 昔々、それはそれは美しい姉妹がおったそうな……
 そうやって語り継がれてきた昔話はめでたしめでたしのお話ではない。
 おどろおどろしい、愛憎の物語なのだ。
 
鎮「当てがあるならば、こんなにも苦しみはしませぬ」
偲「…………そう……だな……」
 
 呪いの元凶となった双子は実在し、性格はまるで反対だったが、たいそう仲の良い姉妹だったという。
 ところが二人が同じ男を愛したことから、悲劇の幕は上がる。
 男は美しい姉妹の間を行ったり来たりしていたが、とうとう慎ましくおとなしい妹と祝言を挙げることになる。
 恋に破れた姉は心に傷を負いながらも身を引き、妹の幸を祝った。

▽つづきはこちら

 しかし数年後に男はただおとなしいだけの妻に飽きて、今度は姉の方に目移り始めたのである。
 姉は男が今も忘れられず恋焦がれたままであったから、二人で共謀して妹を追い出そうと考えた。
 初めは妹に思いを寄せる男に与えて、ふしだらという理由をつけて離縁を突きつけるつもりだった。
 しかし相手の男は無体をせずに、手の内を妹に話してしまう。
 そこで夫は仕方なく、他の理由を適当につけて、離縁を言い渡す。
傍らに嫁ぐまでは片時も離れたことのなかった、この世で最も信頼する自分の片割れがいることに妹はひどく傷ついた。
 自分は捨てられたのだ。
本当に選ばれたのは、姉だった。
 だが子がある身として、彼女も引くわけには行かないと離縁を突っぱねる。
逆に追い詰められた二人は、村の真ん中を突っ切る暴れ川に橋を立てようとなったときに人柱として、妹を指名したのである。
いや。妹ではなく、姉を。
人柱は、処女で美しい娘と相場は決まっている。
そこで姉は自分が名乗りを上げておきながら、当日は妹に成りすまし、本物の妹を差し出したのだ。
妹は当然騒ぎ、訴えた。
だが、他に人柱のなり手がいないとなれば、ぜひともやってもらわねばならない。
村の衆もこれが姉でないことはわかったのにも関らず、仕立て上げてしまった。
全ては暴れる川のためである。
川の神を鎮めるためには、あばずれた姉よりも気立てのよい妹が相応しいと考えたのだ。
 逃げられないように、また、呪って這い上がってこれないように、手首足首を切断し鎖に繋いで柱にくくりつけた。
 
 “氷”る川に“鎖”につながれて沈められた“女”。
 
それで氷鎖女。
裏切った夫と姉がのちに結ばれたその子孫たちこそが現在の氷鎖女一族である。
皮肉な名前をつけるようだが、これには理由があった。
村ぐるみで殺された女が双子であったことから、彼女の血族でもあることを強調してだから子孫に崇りを成してくれるなとの願いを込めて祭り上げていたものがいつしか定着して里の名前となり、一族の名前となったのである。
少し話を呪いの起源に戻せば、苦悶に歪んだ女の顔が初めに浮き出たのは、夫と姉の間に出来た双子の女児だった。
これには二人とも肝を冷やした。
妹の呪いに違いないと、夫婦はその子を川に投げ捨てた。
それが氷鎖女祭りの起こりだと言われている。
呪いを回避するために彼らは、代々に渡ってせっせと人柱を続けた。
今度は川の神を鎮めるのみならず、氷鎖女の女の怒りも鎮めなければならなくなったと一族共通の罪意識が駆り立てるのだ。
15歳まで育てよというのは、途中から加わったもので、沈められた女が15だったことに由来する。
同じ年まで育て、姉に見立て、憎き姉の血筋の者を同じ目にあわせましたとして許しをこう祭りなのである。
15になるまでの間も毎年、12月31日には村中を氷鎖女の子は走り回り、厄を引き受ける者としてつぶてを受ける。これが小厄の氷鎖女祭り。
村人は自分たちに降りかかる災厄を氷鎖女の子が持って行ってくれると都合よく信じていた。
つまり、厄うつしである。
つぶてに厄を込めて氷鎖女の子に当てると、厄はその子供に取り憑き、やがて15の大厄・氷鎖女祭りで川の中に一緒に持っていく……「水に流す」という意味で使われる。
村の公認であったため、氷鎖女の子には何をしてもよいと拡大解釈する者も多かった。
村の中で、「氷鎖女の子」は人間と認識されていなかったのである。
つぶてを投げつけるだけでは収まらず、時には小厄の氷鎖女祭りで興奮のために殺してしまうことも珍しくなかった。
そのときにはその遺体を川に流して、大厄だったとして片付ける。
鎮自身もまた、小役・氷鎖女祭りを経験しており、着物に火を点けられたり、ふざけが高じて錘を抱かされて井戸に落とされたこともあった。
こうしてまた一族は犠牲者を身代わりとして仕立て上げ、さらに恨みを根深く濃いものとしてゆく。
彼らの行動は悲しいかな、恐怖と罪から逃れるための過剰防衛でしかなく、却ってそれが深みに嵌っていくものだと未だに気づかない。
悲劇から数百年経った今も。
初めの氷鎖女の女を筆頭に、一族全体からいじめ抜かれて殺された氷鎖女の子たちの怒り、恐怖、哀しみ、憎しみ、恨みが積もり積もって、次の世代へ。
黒い力は脈々と受け継がれて強まってゆく。
この恨みの連鎖を止める……つまり、呪いを解くには2つの方法がある。
まず一つは一族が一人残らず殺されること。
根本の恨みを晴らさせてやることである。
誰に。
もちろん、主役は氷鎖女の女を身体に貼りつかせた氷鎖女の子だ。
そのために禍々しい力が蓄えられているといっても過言ではない。
氷鎖女の子は、殺されるために生まれてくるが、裏を返せば「滅ぼす者」でもあった。
もう一つは、意外に思うかもしれないが、愛されることである。
どの角度から見ても愛される要素のない氷鎖女の子。
だが原点に立ち返れば、夫と姉に裏切られたことから端は発している。
誤った道を元に戻してやれば良いのではないか?
あの女の顔がついた子供を心から愛してやることが叶えば、呪いは解ける。
あくまで生き残っている一族が言い出したことだから、またこれが本当とは限らないが彼らは解き方もそれだと信じている。

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