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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 58-7

メイディア「先生? どうなさったの、先生?」
氷鎖女「えっ? あっ?」
メイディア「急に黙ったりして……さっきから何度も呼んでいるのに」
氷鎖女「す、すまぬ、ちょっとぼんやり」
メイディア「いつもボンヤリですわね」
氷鎖女「失敬な」
メイディア「だって本当のことですもの」
氷鎖女「…………」
   「えっと……」
メイディア「はい?」
氷鎖女「じゃあ、それでいい?」
メイディア「…………はい……あっ! いいえっ!」
氷鎖女「どっち? いいの?」
メイディア「やっぱりダメ」
氷鎖女「エ」

▽つづきはこちら

メイディア「事情はわかりました。わかりましたし、ワタクシはリクやクレスと暮らすのは構いません。ですが、しかし……しかし、しかしっ」
氷鎖女「ああ、そうか。年頃の男女だしな。でもあの二人なら……」
 
 同じ屋根の下で年頃の男女が3人で暮らすというのは、考えてみれば問題があるかもしれない。
 けれどリクもクレスもおかしなマネをするような人間ではないし、またその度胸もないだろうと氷鎖女は思った。
 
メイディア「そうではありません。ワタクシも信用しております、あの二人に限っては不逞なことなど致しません。でも……ワタクシ……やっぱり会うのが……恥ずかしい……」
氷鎖女「まだ気にしておったのか」
メイディア「だって……」
 
 うつむいて口を尖らせる。
 メイディアにとっては大問題なのだ。
 
氷鎖女「今すぐの話ではござらんよ。まだ3回生。何らかの事情で辞めたり、追い出されぬ限り、少なくともあと1年は養成所から出て来ぬでな」
メイディア「そう……ですね」
氷鎖女「それにヤツラが来るかというのもわからぬ。だいたい、ヤツラにはまだ話を持っていってもおらぬし、それも良ければ、という話でござれば」
メイディア「少なくともリクは喜ぶと思います、先生に誘われれば断る理由なんてありませんもの」
氷鎖女「さぁ、それはわからぬが。ま、それらも踏まえて考えておいて欲しいでござるよ。先のことを」
メイディア「う……は、はい」
 
 立ち上がった氷鎖女を目で追って、
 
メイディア「どちらへ?」
氷鎖女「疲れたから、寝る」
メイディア「疲れたって……まだ午前ですけど?」
 
 昼にもなっていない、11時だ。
 けれど軽く手を挙げて応えただけで、氷鎖女は階段を上がって行ってしまった。
 
メイディア「せっかく帰って来てもあんまりお話して下さらない……ブゥ」
 
 頬を膨らませる。
 一週間に一度しか顔を見せてくれなくなったというのに、戻れば寝てばかりだ。
 家からとうとう出て町に買い物に行ったこと。
 外に出たら体が軽くかったこと。
 久しぶりに魔法を撃ってみたら今までになく威力が強くなっていて驚いたこと。
 一週間分、すべてのことを聞いてもらいたかったのに。
 
メイディア「買い物に付き合って荷物を持つとかしてくれればいいのに……ハッ! そういった意味でもリクやクレスはいた方が便利なのではないのかしら? 荷馬車のように使える!?」
 
 とんでもない用途を考えているメイディアだったが、やがて空想にも飽きて、ここしばらく読んでいる小説本を開いた。
 話す相手がいないとなるとやることは限られていて、今は本が友達である。
 家では禁止されていて読んだことのない恋愛小説とやらを買ってきて、現在、それに夢中だった。
メイディア「この伯爵令嬢というのは、なんて憎らしい女なのでしょう! 意地が悪いったら。これではマリアが可哀想ではありませんか」
 
 どこぞの見知った令嬢にそっくりな、イジワルな登場人物にメイディアは腹を立てていた。
 ………自分のことは見えないものである。
 
メイディア「可哀想にマリア! ワタクシはアナタの味方ですからねっ!! 令嬢がいくらイジワルをしてきても挫けてはなりません!! ああ、もう、ワタクシが本の中に入れたら、あんな令嬢などひとひねりで泣かしてさしあげますのに! ……はうっ!? どうしてここで終わっているの!? 続きはいつ出版されるのかしら!? どうしよう、もやもやしてきました。ヒサメ先生にも読ませて、感想文を書かせましょう。夜通しマリアンヌについて語り明かさねば!! おっと、そろそろご飯の支度をしませんと……」
 
 気が付けば日が傾きかけている。
 小説を読んでいると時間はあっと言う間である。
 眠っていた氷鎖女がようやくのそのそと2階から降りて来た。
 
メイディア「あっ、マリアンヌ!!」
氷鎖女「……………………………………………誰が?」

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