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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 58-5

リク「……他に探せって……そういうことなのかなと思って」
レク「フラレたって……だ……誰に?」
 
 女の子達の憧れの的、絶世の美男子、優しくて強くて頭の良い、非の打ちどころのない彼を振ったというのはどこのどんな令嬢であろうか!?
 さすがのレクも絶句して次の言葉が出て来ない。
 朝からドッキリ情報だ。
 ほとんどルームメイトの会話に交ざってこないクレスも驚いてベッドから跳ね起きた。
 
クレス「フラレたってマジでっ!? 誰!?」
リク「うーん………先生に……」
レク「……………念のために聞くけど、ナーダ先生だよ…ね?」
リク「ヒサメ先生」
レク・クレス「……………………………」
 
 二人、期待外れだったような顔をして目配せをする。
 てっきり恋愛ゴシップだと思っていたのに、どうやら違ったようだ。
 

▽つづきはこちら

リク「もしかして……俺、ウザかったかな」
クレス「ああ、ウザイ、ウザイ。あれだけやられたら確かに嫌になる」
リク「エ」
 
 反応して初めてそちらを向く。
 
リク「やっぱりイジりすぎ?」
レク「……っていうか……何を言われたの? フラレたっていうからビックリしたじゃないか」
クレス「半径1m以上近づくなとかって言われたんだろ、大かた。喜んで損した」
レク「よ、喜んでたの? ダメだよ、そんな……」
クレス「リクがフラれるなんて、笑えるじゃん」
レク「こらこら」
 
 クレスを軽く叱って、リクに向き直る。
 
レク「叱られてしょげてるの? そんなに気にしちゃダメだよ」
リク「叱られたっていうか……カノジョ作れって言われた」
クレス「なら別にいいじゃん」
レク「…うん。しょげることじゃ……」
リク「長く付き合えないって言われた」
レク「……!」
クレス「だから、イジメ過ぎっから言われるんだよ。特に最近」
リク「そうかなぁ」
レク「………………」
  『……もしかして……そんな単純なものじゃないのかも……? いや、言い方にもよるか。そんなに深い意味がなくて、クレスの言うようにちょっかい出し過ぎて言われたのかもしれないし』
 
 しょんぼり窓枠にアゴを乗せているリクを見るのは珍しくクレスはニヤニヤしていたが、レクは少し心配だった。
 
 
 同じ、氷鎖女は危険生物メイディアに対し、リクに言ったのと同じことを繰り返していた。
 
氷鎖女「一人では暇でござろ?」
メイディア「ですから、先生がここから通って下さればよろしいのです」
 
 質素な服装になった元伯爵令嬢が粗末な台所のテーブルを叩いた。
 
氷鎖女「それはダメだから、えっと、何か生き物を飼ってはどうか?」
メイディア「ま! それは素敵な思いつき。ワタクシ、白くておっきい犬がいいわ♪ ふかふかのっ」
 
 すぐに機嫌を直して身を乗り出す。
 
氷鎖女「……犬とな?」
   「………………」
 
 首をかしげる。
 
メイディア「どうなさったの?」
氷鎖女「うん、まぁ、犬っぽいかな。平気平気」
メイディア「……ぽい?」
氷鎖女「ぐるぐると円を描く、犬っぽい生き物はどうか?」
メイディア「ぽいところが物凄く気になります」
氷鎖女「毛色は残念ながら黒だが、もっさり大っきいしおとなしい。賢いからすぐ何でも覚えるでござるぞ」
メイディア「……ずいぶん具体的ですのね」
 
 怪しむ目付き。
 
氷鎖女「うっ……いや……その……」
 
 口をもごもごさせる。
 
メイディア「なんです、その生き物とやらは!」
氷鎖女「い、犬っぽい生き物でござるよぅ」
 
 詰め寄られてしどろもどろ。
 あわてて話題を切り替える。
 いや、本当は切り替わっていないのだが、ところでという言葉を使ってお茶を濁した。
 
氷鎖女「ところでゴールデン」
メイディア「リディアとなりましたけど、何か?」
氷鎖女「リクはあれか? 嫌い?」
メイディア「唐突ですのね?」
氷鎖女「うん……まぁ……」
メイディア「嫌いなところは多分にありますが、そのものが嫌いというわけではありません。何故?」
氷鎖女「いやな、あの……あのな……ええと……」
メイディア「ハッキリ素早くおっしゃいな。相変わらずイライラしますのね」
氷鎖女「……………あの……リクがな? あ、いや、リクはそのようなことは申しておらぬぞ、一言も。それはあの、拙者が都合であの……」
メイディア「前置きは、ようございます」
 
 ぴしゃりと一刀両断。
 
氷鎖女「あの……リクが……寂しがっておる……っぽい」
メイディア「まさか」
氷鎖女「そちらがおらぬようになってから、やたらとひっついてきおってな。本人はあまり意識してなさそうではある……っぽいが」
メイディア「彼が先生をお好きなのは、今に始まったことではございませんわ」
氷鎖女「拙者など好いておらぬよ、あの者は」
メイディア「おわかりになりません? あんなにあからさまですのに」
氷鎖女「あの者は拙者でなく、亡くした父親が好きなのでござる」
メイディア「……お父様……?」
 
 リクの一連の言動を思い起こし、
 
メイディア「お父様にしてはあまりにもミジンコだから、違うと思いますわ」
氷鎖女「……お前、いっぺん死ぬか?」
メイディア「オホホホホッ!」
氷鎖女「……おのれ」
 
 テーブルの下の足を蹴飛ばす。
 
メイディア「あっ!? 何をなさいますっ!?」

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