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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 58-2

 氷鎖女は実際に家では泣いてばかりだと言いかけてやめた。
 メイディアが助かったことは、本人たっての希望で内緒なのだ。
 
リク「……そうだね」
氷鎖女『………………』
リク「折れるときは………簡単なんだ」
氷鎖女「誰でも同じでござろ」
リク「追い詰められて……悲嘆にくれて身投げされるのなら、いっそあの日、一緒に崖から落ちても良かったかな。……ふふっ。なんてね」
氷鎖女「心中か? 割かし、浪漫ちすとなのでござるな」
リク「……冗談だよ。俺とじゃ、メイディが気の毒だ」
 
 自嘲気味に笑う。
 

▽つづきはこちら

 
氷鎖女「……うん、まぁな」
リク「あら? フォローなし?」
氷鎖女「して欲しい?」
リク「いいえ、結構です」
 
 お手上げポーズ。
 
リク「あ、また負けたね。8回目連敗記録更新」
 
 まだ王手まで追い詰められていなかったが、先々の展開を予測して、リクは負けを認めた。
 
氷鎖女「最近、やる気無さげだからな。手前」
リク「そんなこと……」
氷鎖女「やってて骨がなくてつまらぬ」
リク「はは…ごめん」
氷鎖女「成績も下がっておるようだしな」
リク「……………」
氷鎖女「……別にいいけど」
リク「……怒ってる?」
氷鎖女「別に」
リク「……怒らないの?」
氷鎖女「そのようなときもござろう」
リク「うん……すぐ……元に戻るよ」
 
 目をそらす。
 
氷鎖女「……………」
 
 将棋の駒と板を片付けながら、
 
リク「先生はさ、何か……生きるための支えっていうか……望みとかあるの? これが折れたら……ダメかもしれないっていう……」
氷鎖女「さぁ。あまり深く考えて生きておらぬでな。たいそうなものがなくても、飲み食いさえできれば生きていられるから」
リク「それはそうなんだけど……もっと、他に」
氷鎖女「んー。強いて言うなら、死ぬのが怖いから生きておるというところか」
リク「死ぬの……怖い?」
氷鎖女「怖くない?」
リク「……わからない」
氷鎖女「生きるのも怖いが、まだ見知った世界だ。拙者は死んだことがないので、死後どうなるかを知らぬ。眠ったようになるならいいが、ずっと苦しむのは嫌だ」
リク「それはそうだけど……天国だったら、幸せかもしれないよ」
 
 亡くなった人達に会えるかもしれない。
 
氷鎖女「だって話に聞くところによると天国は行いの善い人しか行けぬと申すではないか。ならば拙者は行けないもの。その話が本当なら、地獄にゆくに決まっておるし、そんなの怖い」
リク「……子供みたいだね」
氷鎖女「怖くない方が不思議でならぬ」
リク「言ってることはわかるよ」
氷鎖女「怖いのは嫌だ」
リク「なら先生は…………どこにも、行かないね?」
氷鎖女「……は? 行くよ?」
リク「え?!」
 
 おどろいてクッションから腰を浮かせる。
 
氷鎖女「土曜日であることだし、本日の授業も全て終わったし、そろそろ家に戻らないと」
リク「な、なんだ。ビックリした。やめてよ。空気読んでよ。今、そんな話してないじゃん」
 
 驚いてしまった分だけ、恨みがましく責めたくなる。
 
氷鎖女「やめてと言われても、変な生き物を拾ってしまってな。エサをやりにたまには戻らないと餓死されても面倒だし……」
リク「そういえば、最近、宿舎じゃないよね? 戻るってどこに行ってるの?」
氷鎖女「家でござる」
リク「家!? あったの!?」
氷鎖女「そりゃあるでござるよ。養成所は職場だもん」
リク「嘘……」
氷鎖女「拙者を何と思っておる。養成所から生えているのではないわ。生活の場くらい他にある」
リク「…………………行きたい」
氷鎖女「……エ」
 
 言えばこうくると少し考えれば想像ついたのに、口が滑った。
 しまったと内心、氷鎖女は舌打ちをした。
 
リク「俺も一緒についてっていい?」
氷鎖女「ダメ」
リク「どうして?」
氷鎖女「こっ、小汚くてヒトサマを呼べる状態にないから」
 
 連れて行ってしまっては、メイディアに叱られてしまう。
 何とかごまかして凌がなくては。
 
リク「平気だよ、俺が掃除してあげるし」
氷鎖女「いやでもあの、あのっ……飼ってる動物が凶暴で人が侵入すると鳴いたり吠えたり、」
リク「大丈夫。俺、動物好きだから」
氷鎖女「でっ、でも、食いついて内蔵を引きちぎったり脳みそが大好物で……」
リク「……な、内蔵? 脳みそ!?」
氷鎖女「それにそれに、えーとえーと……気に食わないとすぐ蹴ってきたり、足踏んだり、キン肉バスターとかコブラツイストとか……」
リク「キン肉バス…!? ちょっ……ちょっと待って。それって……何を飼ってる……の?」
氷鎖女「う、ううん。あの…………変な……生き……物?」
 
 歯切れ悪く、口をモゴモゴさせる。
 

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