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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 58-6

氷鎖女「ま、あれだ。そちらがおらぬようになって急に色々とこう……激しくなったのでござるよ。甘えが」
メイディア「ワタクシがいなくなったせいではありません。恐らく、お手紙のせいです」
 
 ふざけるのをやめて真顔になる。
 
氷鎖女「手紙?」
メイディア「彼のご家族はワタクシの家庭教師に殺害されておりますの」
氷鎖女「……………」
メイディア「そのことを嫁に行く前に報告しました。これを言うとワタクシも首を切られてしまいますが、もういいと思って」
氷鎖女「そんな約束はもう気にするでない」

▽つづきはこちら

メイディア「……ありがとうございます。先生が守って下さるのですよね?」
氷鎖女「……その約束もできぬが、ここにいて拙者がいる間なら」
メイディア「では信じます」
 
 にこりと笑う。
 
氷鎖女「…………」
メイディア「リクの話に戻しますと、恐らくそのせいでショックを受けたのだと思います」
氷鎖女「そういや何か折れたとか言っておったな」
メイディア「養成所に入ったのもきっと敵討ちのためですわ。ワタクシならそうしますもの。力をつけて復讐戦です」
氷鎖女「なるほど、そうでござるな」
メイディア「ところが、その犯人はもう死んでいません。それを伝えてしまったから、しょんぼりちっくなのです」
氷鎖女「うん」
メイディア「本当はその事実も異なっておりまして、本物の犯人は公爵です」
氷鎖女「……なに?」
メイディア「そのことはまだ伝えていません」
氷鎖女「…………」
 
 エグランタインで見聞きし体験したことをメイディアは、ノートに書き留めるつもりでいた。
 いつかほとぼりが冷めた頃に公表してやろうと考えたのである。
 ただ、今はまだ思い出すだけでパニックに陥ってしまうため、その作業は1行も進んでいないが、必ず報いは受けさせてやる。
 あの“小鳥たち”に誓って。
 やられたままで済まさないのもこの令嬢たるゆえんである。
 
メイディア「ですからワタクシがいなくて寂しいのではないの。先生が慰めてやって下さいな」
氷鎖女「うーん。ではそれはそうとしよう。ゴールデンが恋しいのではなく、追っていたカタキがおらぬようなってしまって、しょんぼりと」
メイディア「たぶん」
氷鎖女「でもそれをさしおいても、リクを嫌いではないのだな?」
メイディア「嫌いではありませんけど、どうしてそんなに聞くの?」
氷鎖女「んー……一緒に暮らしても悪くないかと……」
メイディア「はぁっ!?」
 
 素っ頓狂な声を上げてメイディアは口をぽかんと開けた。
 
氷鎖女「向こうがどう言うかなど知らぬが、もしも卒業してゆく当てがないのならここでもよいと思ったのでござる」
メイディア「…………」
氷鎖女「出所すれば、晴れて正騎士。さすれば軍隊の宿舎もあろうし、お給金も出て自分でどこかに家を借りることもできよう。子供でもないのだし、だから、放っておけばよかろと思ってはいたのだが……」
メイディア「だが?」
氷鎖女「今見ておるとふにゃっふにゃっくにゃっくにゃあしておるでな」
 
 椅子に座ったままでぐにゃぐにゃ体を動かす。
 
メイディア「………先生の表現がイマイチわからないのですけど」
氷鎖女「わ、わからない!? ではもう少し……こう、ぐにゃっ、ぐにゃっと……」
メイディア「いいです、いいですもう、不自然な動きで表現しないで。キモチワルイ」
氷鎖女「カノジョでも作れと言うたら嫌だと申すし……」
 
 言われて、身体をくねらすのをやめる。
 
メイディア「誰か意中の方でもいらっしゃるのでは?」
氷鎖女「そこでゴールデンかと思ったのに」
メイディア「残念でした」
氷鎖女「まぁ、違うにしても、二人で共同で生きて行くのも悪くないのではないかと提案だ」
メイディア「二人?」
氷鎖女「どちらも身寄りがあるまい」
メイディア「あります」
氷鎖女「もうないも同然だ」
メイディア「むぐ……」
氷鎖女「行く当てがない間だけ共同で暮らして、他に見つけて行きたくなったら勝手にいなくなればいい」
メイディア「……………」
氷鎖女「リクほど信用のおける奴は他におらぬし、表面的には頼りになる。お前様は女だ。独りでは何かと心細かろう」
メイディア「……………」
氷鎖女「……あー、クレスを呼んでもいいかもしれぬな。身寄りがあるのかないのか知らないが、なさそだし。あの者が来てくれればなお心配ない」
メイディア「わぁ。そしたら、黒薔薇トリオですわね」
氷鎖女「うん」
 
 メイディアが笑ってくれたので、氷鎖女は少しほっとした。
 拒絶されたらまた別の手を考えなくてはならない。
 自分がいなくなってしまう前にどうにか、メイディアやリクの足元を固めてやりたかった。
 クレスにはミハイルがついていて、何かと力になってくれるかもしれないが、メイディアにもリクにもそれがない。
 彼らの頼りは自分であることは承知しているが、その自分があと1~2年もつかどうかなのだ。
 こんな面倒を抱え込みたくなかったから、生徒との距離を縮めるつもりは全くなかったのだが、成り行きでメイディアを拾ってしまうし、リクは支えを失って折れるわでそうも言っていられない。
 我ながら、付き合いがいいとほとほと呆れてしまう。
 
メイディア「4人で暮らすのも、まぁ、悪くありません」
氷鎖女「うん? 4人?」
メイディア「ワタクシとリクとクレスと先生」
 
 指折り数える。
 
氷鎖女「あ、ああ……そうでござった……な」
メイディア「まっ。ご自分を数え忘れしていましたの? もーっ!」
 
 成長したメイディアとリクとクレスがこの家で当たり前の生活をする。
 食事をして洗濯をして、白い大きな犬を飼って、黒猫チェリーがいて、ケンカをしながらも日々、明るく楽しく……
 けれど、その風景に自分はいない。
 ここで暮らしていくのは4人ではなく、3人だ。
 
氷鎖女『死ぬの………嫌だな……』
   「……………」

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●Thanks Comments

ヒサメ先生

ヒサメ先生死んじゃうの?(T_T)

From 【あっぴ】2008.08.03 03:36編集

呪いにかかってますから。

誰かに解いてもらわないとアウトです。

From 【ゼロ】2008.08.03 07:43編集

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