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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 37-8

 んが。しかし。

 彼がちょぉ~っとばかりいい気になっていたのも誘いがあった当日くらいなもので、翌日にはすっかり忘れ去っていたのである。

 実のところ、あまり本気で受け止めていなかったのだ。

 力量はほとんど差がなく、リクに対して特別引け目も感じていないクレスはメイディアほど燃えていなかったし、精神的に追い詰められてもいなかった。

だから、持ち上げられていい気になっただけで終わってしまったのだ。

 ところが相手はそうではない。

会う度に必ず声をかけ、考えてくれたかと尋ねてくるのだった。

 こうなってくると自分がどれほど強く望まれているのかが嫌でも解ってくる。

 だんだんと興味がわいてきて、メイディアがそうしたように図書室の一角に小さく設けられた資料室に足を運んだ。

 

クレス「へーえ。この卒業生もあのアゴの生徒だったんだ。ふーん」

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レイディ・メイディ 37-7

クレス「そんなコト言って。色んな人にそうやって誘いかけてるんだろ」

レヴィアス「いいや、そんなことはない。本物と思った人間にしか私は声をかけたりはしないからね」

クレス「ふ……ふぅん。本物……ねぇ?」

 

 あくまで気のないフリをしながら、彼の心は十分揺さぶられていた。

 

レヴィアス「いくら才能があったとしても、目覚めさせないのでは宝石は光らない。ちょっとキレイなだけのただの石で終わりたくはないだろう、君だって? ん? どうね?」

クレス「ちょっとキレイなだけの……ただの石?」

 

 少しムッとして目の前の教官をやんわりと睨む。

自分はすでに宝石のつもりなのだ。

 もちろん、だからと言って、これで終わりなんかじゃなく、磨けばもっともっと光る宝石には違いないのだけれど。

まだ今年16歳のクレスの前には無限の可能性が広がっているのだ。

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レイディ・メイディ 37-6

氷鎖女「ま、どうしても猫殿が変身しなければ、そのうちに飽きて忘れるであろ」

ミハイル「だといいが……。かなり夢見てるぞ、アレは」

氷鎖女「お。アゴが来よった」

ミハイル「あご?」

 

 日蔭を求めて来たのか、レヴィアス教官が分厚い魔法書を小に抱えて校舎裏を通りがかった。

 猫に話しかけていたクレスが、あわてふためいているのがおかしい。

 

ミハイル「……レヴィアス殿か。……………………お前、アゴとか言うなよな」

氷鎖女「ちょっと面白い。プッ。転んで地面に突き刺さって抜けなくなったらどうしよう~♪」

 

 わくわく。

 

ミハイル「お前の笑いのツボがちっともわからん」

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レイディ・メイディ 37-5

フェイト「……キミは……俺に何の恨み………………」 ヒク……

メイディア「そんなところで寝ているアナタがいけないと思うの。でも夏ですもの。涼しくて良いのではなくて?」

 

 自分のしでかしたことをよそにおいて、もっともらしくうなづく。

 

メイディア「授業、始まりましたわよ。では、失礼」

 

 フェイトが何か言う前に脱兎のごとく逃げ去った。

 

フェイト「……あのクソ女……」

 

 水滴が滴る前髪をかきあげる。

 

 

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レイディ・メイディ 37-4

メイディア「よろしくて?」

 

再び奪取したシャベルを勢いよく、一人問答するレクに向ける。

 

メイディア「ワタクシは強くなりたいから、レヴィアス先生に師事を仰いだのです。ヒサメ先生の知らない呪文を教えてもらうの!!」

     『そうして、リクとクレスを出し抜くのだわ!! 一番はワタクシ!! メイディア=エマリィ=シャトーなのよっ!!!!』

 

 幼かった表情は瞬く間に消え失せ、代わりに決意強い光が燦然と輝いた。

 

メイディア「ワタクシは、背中越しにコソコソとしか意見できない方々など、目ではありませんの。逃げ出しただなんてそのようなことはこのメイディアにはありえません。心配性なクレスに伝えてちょうだい。ワタクシは心配されるほどやわではございませんと。それよりも、自分の身を心配なさってとね。フフフッ」

レク「………………えぇ~っと」

 

 想像していた展開と違うんですが…………。

対応に困って苦笑いを浮かべる。

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レイディ・メイディ 37-3

レク「メイディ、メイディってば」

メイディア「そんなに大声で呼ばなくても聞こえています。何か御用?」

 

 ようやく足を止めて振り返る。

 

レク「なんだよ、ゴキゲンナナメだな」

メイディア「別にナナメじゃございませんことよ。ただ、お話したい気分ではないだけです」

レク「一緒に教室まで行こうよ。ニケ先生じゃないの?」

メイディア「ワタクシとおりますと後ろ指指されますわ」

レク「そんなの、関係ないよ」

メイディア「あります。ワタクシが嫌なの。話しかけないでちょうだい」

フェイト『そら来た』

レク「ああ……」

 

 ピシャリとはねつけられて、肩を並べて歩幅を合わせていたレクがその速度を落とした。

 

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レイディ・メイディ 37-2

 問題その3。メイディアのクラス替え。

 

レク「これはなー……。うーん。本当に周りがとやかく言う問題じゃないんだけど」

 

 なのに今までの彼女が培ってきた揺るぎなき嫌われ者の地位が、話題に火をつけ、周囲の付け込む隙を与えてしまっているに過ぎない。

 本人さえ変われば、この問題は解消されるはずなのだが。

 

レク「かといって、本人に反省を求めるのも何か違うんだよな」

 ない知恵を絞ってうんうん唸っていると、隣の上の段から文句が飛んできた。

クレス「ちょっと、うるさいよ!!」

レク「あ、クレスいたのか、ゴメン」

クレス「いて悪かったね」

 

 横のベッドからも、

 

リク「俺もいるよー」

レク「何だ、二人とも戻ってたんだ。言ってくれれば良かったのに」

 

どうも独り言丸聞こえだったらしい。

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