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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 33-10

 何の物音もしない完全なる静寂の中に、音のないざわめきが空気を支配している。

 聞こえないはずのそれが耳元でせわしくおしゃべりをはじめて、ひどい眩暈と不快感を与えてくる。
自然と呼吸が乱れて心臓が早鐘を打った。

 早くこの閉ざされた空間から逃げないと、おかしくなってしまう。

 あふれ出た呪いの力を人形に移し変え終わると、左の人差し指を犬歯でかみ切り、衣類を外した人形の体に封呪のための文字を自らの血で書き入れる。

それが済むと手早く人形に着物を着せ、同じく封魔の術を長々と書き込んだ布を目隠しに巻いた。

 これで完了である。

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レイディ・メイディ 33-9

 いらない、行かない、大丈夫と心配してくれる教え子たちを残して氷鎖女は急ぎ足で自分の教官室に引きこもった。

 

氷鎖女「……間に合った……」

 

 閉じた扉が開かないよう、留め金を引っかけると背中をあずけて深く息を吐き出す。

 

リク「先生!!」

 

 扉を挟んでノックの音が体を伝わる。

 

氷鎖女「そんなに騒ぐこともない。頭痛がするんだ。静かにしてもらえまいか。本当に具合が悪かったら自分でゆく」

 

 こうまで言われてしまっては引き下がるしかない。リクはノックする手を止めた。

 

クロエ「しょうがないよね」

メイディア「次の時間が始まりますわ」

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レイディ・メイディ 33-8

 さすがは白薔薇候補生。

クロエがリクを押しのけると手早く脈を測って呼吸を確認…………しようとしたら、当の氷鎖女がむくりと起き上がった。

 

クロエ「わっ、ビックリしたぁ」

 

 手を当てようとしたまさにその瞬間に起き上がられて、尻餅をついてしまう。

 

氷鎖女「……で、あるからして」

 

 しかも何事もなかったように授業を再開し始める。

 

クレス「ぅおいっ!?」

 

 手の甲で、氷鎖女の胸を叩くクレス

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レイディ・メイディ 33-7

 大きな教室にまばらに座っている学徒たち。

 大抵は黒板の方から遠い後ろや窓際、廊下側の端に仲良い同士で固まって聞いている。

もしくは眠っている。

 氷鎖女の担当する授業はいつもこのような風景だった。

 ……つまり、人気がない。

 寝るのに都合がいいため、訓練で疲れた赤、青の候補生が彼の授業を選択することが多く、教室内は余計に閑散としていた。

特にお昼が終わったこの5時間目というのがいただけない。

疲れた体にたらふく食べて満足した腹。

これで抑揚のないお経のような声で授業が続けられるのだから、眠るなという方が酷だ。

 それでも風変わりな所が気に入っているのか、一部の学徒は熱狂的だった

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レイディ・メイディ 33-6

ジャック「うまく行けば釈放の方向で話を進めれば、彼も飲むんじゃないでしょうか」

 

 叩かれた手をさする。

 

ヴァルト「それは上が決定する事だ」

ジャック「わかってますよ。だから、ヴァルト隊長に頼みに来たんじゃありませんか。お願いします、自分を推薦して下さい」

ヴァルト「しかしな……お前………………………………バカだしな」 真顔。

ジャック「…………………………………………」

    「…………………………………………」

    「……………………弁当よこせや、ゴルァーッ!!!!」 逆ギレして襲いかかる。

ヴァルト「やるか、ボケ」

 

 あっけなく、ヒジテツで返り討ち。

 ガックリ。その場に沈むジャック。

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レイディ・メイディ 33-5

フェイト「君は会えばいつもトラブルに巻き込まれているな」

 

 水をかぶっていたこともあったし、試験ではリクと仲良く空中ブランコで、あと少し遅ければ谷に真っ逆さまだった。つい2,3日前は男子学徒に囲まれてどつかれていたなと思い浮かべる。

 そのときもちょうどフェイトが助けに入ったのだが……、

 

メイディア「助けたなどと思わないでちょうだい。ワタクシ、一人でも十分切り抜けられたのですから」

 

 手からノートを奪い返す。

 

フェイト「……可愛くないな、ホンットに」

 

 彼女はいつもこの調子。

別に感謝して欲しいと思ったワケではないのだが。

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レイディ・メイディ 33-4

 ……赤い表紙のノートが、落ちていた。

 

メイディア「?」

 

 一人寂しい食事を終え、教材を胸に抱くようにして廊下を静かに歩いていたメイディアがノートに気づいて足を止める。

 落とし物のノートをかがんで拾おうとしたら、自分のと勘違いされたのだろうか。

目の前で踏み付けられてしまった。

 

女学徒「あーら、ごめんあそばせ。メイディア様!」

   「あんまり覇気がなくなっていらしたから、存在に気づきませんでしたのー

   「あはは、端っこ歩きなさいよぅ」

 

 数人の少女たちがせせら笑った。

 取り巻きがいなくなったことで、ずいぶんと格が落ちてしおらしくなったように見えるのか、今までちょかい出さなかった連中も悪ノリするようになってきた。

 それでもなお、本人の態度が相変わらずであることが反って反発心を誘発させている。

 だからといって態度を改めるメイディアでない。

相手が相手なら、さらに意固地になるのが彼女。

 レイオットまでもとうとう見放したことで、勢いづいた一部が悪ノリを始めると便乗する人間が増えて際限なく広がってゆく。

 今や彼女は四面楚歌の状態に陥りつつあった。

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