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レイディ・メイディ 33-7
2008.04.23 |Category …レイメイ 33話
大きな教室にまばらに座っている学徒たち。
大抵は黒板の方から遠い後ろや窓際、廊下側の端に仲良い同士で固まって聞いている。
もしくは眠っている。
氷鎖女の担当する授業はいつもこのような風景だった。
……つまり、人気がない。
寝るのに都合がいいため、訓練で疲れた赤、青の候補生が彼の授業を選択することが多く、教室内は余計に閑散としていた。
特にお昼が終わったこの5時間目というのがいただけない。
疲れた体にたらふく食べて満足した腹。
これで抑揚のないお経のような声で授業が続けられるのだから、眠るなという方が酷だ。
それでも風変わりな所が気に入っているのか、一部の学徒は熱狂的だった。
▽つづきはこちら
クロエ『先生はいつニンポーを使ってくれるのかしら? もしやすでに術中!? キャッ♪ っていうことは、もう私たちはニンポーにかかった人なのね!? ウッフフフフフフフフフフフ』
特にクロエとリクは、前に立つ氷鎖女本人を震え上がらせる程の熱視線を放っている。
……方向性はやや間違ってはいるが……
フェイト『そんなに嫌かぁ? この人の授業は幅があっていいと思うんだが。……去年より“あのー”とか“そのー”とか減ってきたし。…………それにしても』
敬遠していたレクとレイオットを思い浮かべるフェイト。
クレス『相変わらずクソつまらない授業展開してるな。もっと授業の仕方を勉強した方がいいと思うね。…………それにしても』
文句を並べ立てているクセに、氷鎖女の授業を欠かさないクレス。
アン『リク君、いつも真面目だなぁ。ステキ……』
授業そっちのけで想い人を見つめては甘い夢に酔うアン。
無意識に手元のノートを探ってさっと青ざめた。
アン『…………ヤダ、あのノートがナイ!!』
リクの隣のメイディアは、これまた別の男のことを思っていた。
メイディア『どうしていつもワタクシが困っている時に彼は現れるのかしら? 笑いに来ているとしか思えない。サイテー!』
こちらをほんの少しも気にしていない素振りのフェイトをにらみつける。
リク『あれー? なんか……いつもと違う気がするんだけど…………?』
一年過ぎても顔を知らない教官の姿を見つめながら、いつもと違う雰囲気をリクは感じ取ってい
た。
フェイト『それにしても……』
クレス『何か……』
クロエ『それにしても、何か……』
リクだけではなく、すでに数人の学徒が薄々と気づいている。
見た目に同じ風景であるこの場所に、異質な空気が漂っていることに。
メイディア『レイオットとはケンカしてしまうし、あの人はワタクシのカッコ悪い時に限って来るし! なんてついていないの!』
アン『ウッソ、ノートが…………ノートがナイナイナイナイッ!!』
……メイディアとアンの二人は、全く気づいていないが。
リク『何か……いつもにも増して、顔が白い気がするなぁ?』
リクが些細な異変に気が付いたとき、教壇に立っていた氷鎖女が倒れた。
本当に、突然に。
使い古された表現ではあるが、“糸が切れた人形”というのが当てはまりすぎるほど、抵抗もなく、その場に崩れたのだった。
リク「先生!?」
机の上をひらりと飛び越し、真っ先に駆けつける。
クロエ「きゃあっ!? ヒサメ先生っ!?」
クレス・フェイト・ステラ「!?」
教室中が騒然となり、一瞬遅れて他に気をとられていたアンやメイディア、さらに遅れて居眠りしていた者たちが席を立った。
リク「先生! 先生!! ……シズカッ!!!」
反応のない氷鎖女を抱えて、何度も耳元で叫ぶ。
クロエ「待って、リク、揺さぶらないで!」