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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 30-2

アン「リク君……」

リク「待って、あわてないで。今…………」

 

 足をかける場所を探し、慎重に、少しずつ下る。

 

アン「来てくれたの!?」

 

 嬉しそうに手を伸ばす。

 

リク「ケガは?」

アン「……擦り傷だけ」

 

 はにかんで答える。

 

リク「よかった」


▽つづきはこちら

 窮地に迎えに来て微笑んだ彼は、アンにとってのまさに白馬の王子様だった。

 ヒロインの危機にどこからともなく馳せ参じる、いずこかの国の王子様。

夢見がちなアンはうっとりと自分のために危険を省みず崖を降りてくるリクに見惚れていた。

 …………ところがどっこい。

 助けに来どころか、当のリクも一緒に落ちて現在危機に直面しており、実のところ、助けて欲しい側だったりした。

 

アン「リク君、私、怖かった」

リク「うん、俺もだよ。奇遇だね」

 

 もう俺が来たからには大丈夫くらいの事を言って欲しい場面だが、生憎、彼はこういったところにセンスはない。

 

メイディア「足場があるのですね……ハァ~」

 

 上からそっと覗き込んでへなへなと座り込むのはメイディア

 問題が解決したワケでもなのだが、二人の会話から多少の余裕を感じ取れた。

 運のいいことに、窪みの手近には枯れた古木の枝だか根だかのようなものがひとつ飛び出しており、リクはそこに手をかけている。

 実際にはここからが大変なのだが。

 

メイディア「どうしよう……助けを呼びに行った方が……」

 

 仲間は近いはずと辺りを見回す。

 けれどこの場を離れて再び戻ったときに二人の姿がなかったらどうしよう。

 ほんの少し、強い風が吹いただけでも状況は一転してしまう。

 メイディアは浮き出る冷や汗を汚れた袖で拭った。

 ああ、神様!

 足のすくんだメイディアは具体的な行動を起こせずにただただ祈るばかりだ。

 レクとレイオット、そしてフェイトの名を何度も繰り返して呼ぶ。

 対するアンの方ではリクを万能神のごとく思っている節があるので、早くも助かった気でいた。

 

アン『リク君が私のピンチを感じて駆けつけてくれたんだわ!』

 

 ロープが入っている荷物はリクが持っていて、メイディアの荷物にはない。

 命綱のないロッククライミング状態のリクが上手いこと窪みまで降りて、背負った荷物からアンがこれまた上手にロープを取り出さなければならない。

 窪みは二人を収容できる広さはないので、方法はただ一つだけだ。

 まずはアンが自分に縄を括りつけて縄の先端を上に待機しているメイディアに投げる。

 それを受けたメイディアが縄を手近な木に縛ったら、アンはロープを伝って上に登る。

 そのアンがいなくなった窪みに今度はリクが避難して、登り終わったロープをもう一度下によこしてもらい、同じように登る。

 ……理屈ではコレで助かるはずなのだが。

 こう考えて、リクは今の位置まで下ってきたのだったが、相手の行動までは読みきれなかった。

まさか、飛びついてこようとは。

 

リク「アンは俺のリュックからロープを………………って、ちょっ、ちょっと!」

アン「えいっ」

 

 説明をする前に、手の届く位置まできたリクに手を伸ばし、アンは浅はかにも飛びついて体重をかけてしまう。

 

リク「ッ……!?」

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