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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 30-3

 彼女の中で万能なリクは崖っぷちでもヒロインを背負って上まで登りきる屈強の男だった。

 ……が、実際にはまったくもってそんなことはない。

体力も力もお世辞にもある方とは言えない。

 ひ弱なワケではないけれど、人間一人を背負って急な崖を登ることなど不可能だ。

 しっかりした足場で背負い、さらにロープがあればなんとかなっただろうが、今は古木の破片とちょっとした表面の凸凹に頼った非常に頼りない状態にある。

 ずっしりと二人分の体重を支えきれずに手を置いていた土の出っ張りがくずれた。

 同時に古木にかけていたもう片方の手も外れてしまう。

 

アン「キャアッ!」

リク「うわっ!」


▽つづきはこちら

 声を聞いて、仲間を呼びに走りだそうとしたメイディアがすぐに舞い戻った。

 

メイディア「!!」

 

 下を見れば、二人はアンが身を寄せていた窪みよりも下に下がってしまっているではないか

驚きに声も出ない。

 

メイディア「……や……誰か……」

 

 霧で隠れたり、また風で姿が見えたりしているリクはもう、限界に見えた。

 

アン「助けて、助けてっ!」

 

 目を堅く閉じて力の限りしがみつく。

 

リク「暴れないで。とりあえず……ぐ

 

 また下にずり下がる。

 崩れた土や小石が底の見えない霧の中に落ちては吸い込まれるようにして消えゆく。

 

メイディア「……………………………………」

 

 メイディアは呆然と魔界の入り口のような崖下を瞳に映した

 

メイディア「し……」

 

 緊張で口の中が乾く。

唇の色は失せ、にわかに体は震え出し、恐怖が足元から這い登ってきた。

 

メイディア「し……知らない……知らない。ワタクシのせいじゃ……ありませんもの……」

 

 リクをこちらに導いたのは自分だ。

でも落ちたのは彼の責任なのだから。

 一刻を争う状況で、メイディアは最悪の結果に対する自分への言い訳を頭の中巡らせていた。

 

リク「アン、アン、落ち着いて。君がそのままでは二人とも落ちる。目を開けて。今なら……まだ初めの窪みに戻れるから」

 

 刺激しないように噛み含めて言うが、アンは震えて動こうとしない。

 

メイディア「無理よ……引きあげられっこないもの……ワタクシでは無理だわ…………

 

 頼みの綱のメイディアは独り言を口の中で繰り返すばかり

 両足は馬鹿みたいに震え上がり、裏に根っこが生えてしまったように動かすこともできなかった。

 暑いわけでもないのに大量の汗だけが流れては滴となって地面に吸い込まれていく。

 もう一度、レクたちを呼ぼうと思ったが、すぐにそれ無駄だと気づいた。

 戦闘音がする。

 戦闘が始まってしまっては、呼んでも彼らに届きはしない。

 よしんば届いたとして、敵を無視してこちらに駆けつけるだけの余裕があるかどうか。

 

メイディア「…………………………」

 

 後ろを振り返って荷物を見つめる。

 ……どうする?

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