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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 29-2

 ゴールも目前だというその日は朝から濃い霧に覆われていた。

 メイディアとクレス、そしてダレスは例によって例のごとく、それでも進むのを希望する。

 フェイトは反対し、自己主張の希薄なナツメは何も言わなかった。

 クロエだけは霧の中を進むのを反対してくれるかと思いきや、

 

クロエ「霧の中をさまよう恋人二人……」

 

 クロエが突然、ウットリと目を輝かせた。

 

フェイト「……クロエ?」

クロエ「ああ、何てロマンチック」

フェイト「おい、クロエ。正気か? 恋人二人ってどこにそんなのがいるんだ」

クロエ「ちょっと! フェイトは黙っててよ! 今、ちょうどいいところなんだからっ!」

フェイト「いいところって……」

 

 いきなり叱られて、閉口するフェイト。


▽つづきはこちら

 

クロエ「許されない禁断の恋。二人は手に手を取って、もやの中を走り抜けるの」

 

 そっと手近にいたナツメの手を取る。

 

氷鎖女『……出た』 冷や汗、たらり。

クロエ「もうここから逃げるしかない。さようなら、お母さん。さようなら、お父さん。さようなら、我が故郷! ……ああ」

フェイト「……………………………」

 キリリとまゆを吊り上げて、クロエ「さぁ、クロエ! 行こう、見つからないうちに」

 自分を指さして、氷鎖女「……“クロエ”?」

クロエ「二人で新しい土地を目指すんだ」

 

 台詞を言ってから、手を引っ張ってクルリとナツメの位置と入れ替わり、

 

クロエ「でも、お兄ちゃん……」

 また自分を指さして、氷鎖女「……“お兄ちゃん?」

 

 さらに位置を入れ替わって、

 

クロエ「クロエ……。兄妹である俺たちが結ばれるには、こうするしかないんだ」

氷鎖女・フェイト「……………………………………」

クロエ「わかったわ、お兄ちゃん。行きましょう!」

クレス「ねぇ、ちょっと。行くのいかないの? 早くしてよ」

 

 一人芝居を見物していたクレスが苛立って足を踏み鳴らす。

 メイディアなどはすっかり無視して歩きだしてしまってい

 それに気づいたフェイトが後を追ってゆく手を阻む

 

メイディア「なんですの? 止めるなら、クロエ妄想録をお止めになったらいかが?」

フェイト「勝手はよせと言ってるだろ」

メイディア「ワタクシばっかり叱って。どうして目の敵にするのかしら」

フェイト「俺は進むのを反対している」

 

 とりあえず、妄想中はその場から動かないと思われていたクロエが突然駆け出した。

 

フェイト「!?」

クロエ「追っ手よ!」

 

 突然叫ぶ。

 

フェイト「何っ!?」

クロエ「スゴイ数! 逃げてっ!!」

 

 始めは妄想の産物かと思っていたが、本当に走りだしてしかも表情と声は堅く、緊迫している。

 どうにも気配が追ってくる様子はないのだが、とにかく彼女を追いかけることにした。

 ナツメも手を握られて連れて行かれていることだ追わないわけにもいかない。

 

クロエ「大丈夫か、クロエ」

 

 ある程度走った後、急に立ち止まる。

 

氷鎖女『……やっぱり妄想禄の続きだったか……』 ゲッソリ。

フェイト「……バカ」

 

 大好きなガーネットお兄ちゃんになりきったクロエに追いついてきたフェイトが容赦なく頭をひっぱたいた

 

クロエ「ぐあーっ! もうダメだ、クロエ、お前だけでも先に逃げろ!」 ガックリ。

氷鎖女「…………よ……弱いな、お兄ちゃん……」

   『もうダメなのかよ』

クロエ「お前まで死なすワケにはいかない! いいから逃げるんだー」

 

 ナツメの両肩をつかんで揺さぶる。

 

フェイト「いい加減にしろ」

 

 もう一度、ポカリ。

 

クロエ「あたっ」

 

 首をすくめる。

 

フェイト「アタじゃないだろ」

クロエ「あー、もー……今、お兄ちゃんが瀕死の状態で大変だったのにぃ~」

氷鎖女『お前のあにさまはいつでも瀕死の状態だな……』

 ……などと密に思ってみたりする。

 

フェイト「なーにが瀕死だ」

    「……皆、そろってるな?」

 

 クロエを叱った後で、背中を振り返る。

 メイディアがエラソーにと悪態をついており、クレスもおもしろくなさそうに木の幹に背をもたれていた。

 クロエにナツメにメイディアにクレス。それに自分。あと……

 

フェイト「……? ダレス?」

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