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レイディ・メイディ 第29話
2008.03.25 |Category …レイメイ 29話
第29話:乱戦
……そんなこんなで、表面化しない問題?は細々とあったものの、今度の試験は至って順調なG班だ。
むしろ、女の子の前で用を足すわけにはいかない“氷鎖女先生”以外は誰も困っていない。
メイディアのワガママがなくなった分、進む早さは前回の比ではなかった。
もはやゴールは目の前だと全員が思い始めていた。
体力のなさが目立って、後半戦は足手まといになってしまうのが白薔薇・黒薔薇候補生の常だったが、ここに配属されている白薔薇専攻のクロエは騎士の家出身で子供のころから鍛えられていたし、黒薔薇専攻のメイディアとクレスはそこにいる氷鎖女の教え子だ。
氷鎖女クラスは魔術師養成の常識を覆す授業を展開することで知られている。
普通ならば魔法の知識をどんどん覚えて身につけてゆくというのに、氷鎖女クラスときたら、なんと早朝マラソンから始まるのだ。
マラソンなどで体力作りを基本とするのは剣士である赤青であって、白黒は机に向かってひたすらものを覚える。
それが現在の魔法界の定石。
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魔法とは関係ないところからスタートする彼の授業に不安を募らせる学徒も多くいたが、結果は誰もが知るとおり。
昨年の実戦試験では上位を氷鎖女クラスの学徒らが占領していた。
教官たちの間で、これについては始めから才能のある有力な学徒がたまたまあのクラスに集まってしまったのだという見方が強く、今年の総合結果で判断するということで落ち着いている。
その後の判断は今はまだわからないが、少なくとも今回の山を舞台とした試験では体力作りをさせられていた氷鎖女クラスの学徒が強いのは目に見えていた。
お嬢様のメイディアも入学して1年過ぎ。
毎日毎日走り込みをやらされていればさすがに体力もつく。
もちろん赤青の候補生のようにハードな長距離ではなく軽いランニング程度だ。
しかし、それでもやっているのとやっていないのでは雲泥の差である。
初めの内は走るのに疲れて授業中に居眠りする者も目立ったが、慣れてくると運動した後は頭もスッキリしていることに気づく。
1年前はペース配分を間違えては完走できない日もあったメイディアも、今では軽快に走り抜けてまだ余力を残している。
山を舞台にした試験で魔法使いが多いこの班で、剣士であるフェイトやダレスが最も心配していたのは、体力面。
自分たちはいいとして、後の3人が疲れて歩けないなどと言い出しはしないかといつも気にしていた。
特にメイディアとクレスは先を急ぎたがる傾向があり、フェイトが頭で考えているペースを無視してどんどこ進んでいってしまう。
こういうのに限って途中でダウンしそうだと思っていたが、これがなかなかどうして頑張るではないか。
山と平地を歩くのでは勝手が違ったが、山育ちだというナツメから山の歩き方のコツも習ってフェイトを含め、全員が前回よりも楽だと感じていた。
……怖いくらいに、順調だった。
フェイト『……ま、少しは認めてやってもいいかな』
優勝をハリキるテンションが未だ覚めやらぬメイディアを見てフェイトは小さくうなづいた。
初めのテンションを最後まで持ち続けるというのはなかなかできることではない。
二人の勝気に舌を巻く。