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レイディ・メイディ 70-12
2009.08.02 |Category …レイディ・メイディ 70話
口元を長い袖で隠して、ぎ、ぎ、ぎと首をかしげる。いつもの動作で。
鎮「これで、よろしゅうございますかな、ニケ殿」
仮面をしていないせいで別人のように見えるが、当然、彼は何一つ変わってなどいないのだ。
ニケ「うん、ま、いいでしょ。じゃあもう一つ、ヒサメには早速だけど仕事があるんだ」
鎮「よもやリクの小汚い手にもちゅーしろとおっしゃられまいな?」
ニケ「いや。主は姫一人で充分さ」
それは両方が危険な場面になったら、迷わず姫を取れという命令である。
紅の瞳を持つ者は確かに重要であるが、それも姫のためにこそ価値がある。
全ては姫の、いや、姫の存在すらもこのローゼリッタのためなのだ。
レイディ・メイディ 70-11
2009.07.29 |Category …レイディ・メイディ 70話
クロエ「ち、誓いの口付けだなんて、わっ、私……」
たちまち顔はトマトのように真っ赤に茹で上がる。
ニケ「何もそう、意識されずとも。ただ騎士の挨拶ですよ、姫」
クロエ「それはわかってるんだけど……む、無理っていうか……その……」
ローゼリッタでは、特に貴族や平民でも上流家庭の間では、軽い挨拶程度に男性が女性の手の甲にキスをするのは常識である。
だが、中流の平民として育った彼女にはそういった習慣がなく、ただの挨拶だとわかっていてもうろたえてしまうのだった。
鎮「まぁ、ニケ殿。かような形式程度の誓いなどせずとも拙者はちゃーんと(金のために)姫君をお守り致しまする。それに……」
ニケ「それに?」
鎮「ゴキブリを素手で打ち倒して、手を洗わずご飯を食べちゃうようなばっちぃ手なんかにちゅーしたくないでござるよ。ウフフフフ~」
左手を口元に当て、右手をひらひら振って嫌~な笑い。
これを聞いて全員が無言のまま可哀想なクロエを注目。
クロエ「ちっ……ちがっ!? んもーっ! 嘘ばっかり!! 人聞き悪い嘘を勝手に創作しないでぇ~!!」
ががーんっ!??
ビックリ仰天。あわてて否定に走る。
乙女に対してとんでもないイジワルだ。
さすがはメイディア嬢を初対面でイキナリ黄金の巻きグソ呼ばわりする男である。
レイディ・メイディ 70-10
2009.07.27 |Category …レイディ・メイディ 70話
クロエ「……え……あれ?」
ブラウド「……ほーう?」
ガーネット『……女?』
額当てを外し、改めて跪くシズカ=ヒサメ。
意外なその素顔にクロエを含めたグラディウス親子は驚きを禁じえないでいた。
奇行ばかりが目に付く小男。それでいて女性が卒倒してしまうほど醜いというので、どんな醜悪な顔が現れるのかとブラウドとガーネットは構え、ニンジャなヒサメ先生に過大な夢を抱くクロエは切れ長の涼しげな目をした美少年を思い描いていた。
しかし三人の想像はどれも遠く、実際に現れたのは美少年にも美少女にも見える妖しい蝋人形めいた白い顔だった。
頭を下げているためにハッキリと確認することは出来ないが、漆黒の髪の間から覗く瞳は不思議な金の光を帯びている。
レイディ・メイディ 70-9
2009.07.26 |Category …レイディ・メイディ 70話
ところで。
とうとう謁見の間までたどりついたその脱力系・先生。
本来、リクとクロエが来たときには、ブラウドらに混ざって先に参列していなければならなかった。
つまり、リクたちよりも早く着いていなければならなかったわけだが……
ニケ「ヒィ~サァ~メェ~……」
鎮「ひいぃっ!?? お、お許しを~! へへぇっ!!」
青ざめてその場にひれ伏す。
鎮「ちっ、違うのでござる! 焼きイモを焼いていたら、ぽんが……」
ニケ「女王のお呼び出しに遅れてくるなど……」
鎮「あっあのっ、コレッ! コレッ!!」
ニケの雷が落ちる前にと風呂敷を広げて、例のブツを見せる。
ぼてーん……。
鎮「………………」