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響く炎:7
2008.01.02 |Category …箱庭の君 短編2
焔「お前様は、ほんに変わっておるわえ」
響「何がじゃ?」
焔「己(おれ)を嫁にして、願いをいくつも叶えさせようって腹かい?」
響「……おっ。そんな手もあったなぁ? お焔、お前は頭がよい」
焔「……はっ。では何を思うて、せっかくの願いをこのようなことに……」
響「せっかくの…って…。願いは一つだなどとケチなことを言うから……。初めに思いついたままを口にしただけよ」
焔「…あきれた」
響「……………」
焔「お前様のような馬鹿者は初めて見たよ」
響「珍しいなら、得したな?」
焔「……………」
嫁さんを手に入れたから、しばらくはその膝(ひざ)でのんべんだらり。
周囲の者共がうるさく言ったが、もう祝言も済ませたし、言われる筋合いもない。
あとは……
響く炎:6
2008.01.01 |Category …箱庭の君 短編2
………………えー。こうして、ワシは…
響「無事に帰ってこれたワケだが」
配下の者「………………」
響「ワシの葬式があの翌日に終わったってどーゆーコトだ!? …説明してもらおーか?」
配下の者「いや、響様があまりのお覚悟だったので、お帰りにはなりますまいな…と」響「七日は待てと言ったろうがっ!!」 相手の首を締め上げる。
配下の者「いやいや、今日は8日目でございますれば~……」
響「たわけっ!! 葬式はそのずっと前に終わっておったではないかっ!!」
配下の者「備えあれば憂いなし! 次に討ち死にされたときには葬式をせずに済みますな。いやはや…」
響「いやはやじゃねぇっ!! 次に討ち死にするときってのはどんなだっ!?」
女「…お前様…」
配下の者「…ほ? 何ですな、そこな汚い女は?」
響「おお、よくぞ聞いてくれた。これはだな、我が妻の…………」
言いかけて、はたと気づいた。
名前なぞ聞いておらなんだ。
響く炎:5
2008.01.01 |Category …箱庭の君 短編2
魔性「お前が終わらせる? 散らない花を散らせて見せる? それもよい」
響「………………」
魔性「さ、どうする? 首を持ち帰れば、褒美は思いのまま…」
響「………………」
魔性「けれど、己を解放してくれりゃあ、己が願い事をかなえてやるよ?」
響「…!」
魔性「どうする、お前さん? 人がかなえてくれる褒美なんかたかが知れてるじゃあないかえ?」
響「………………」
『それは…そうだ…………いや……』
「…………あ……」
「甘く見るなっ!」
声を聞かぬように、短刀を素早く抜き放って、魔性の首に片手をかける。
響「そんな口車に乗るとでも思うたか、化け物!!」
響く炎:4
2007.12.31 |Category …箱庭の君 短編2
そこまでせねばならぬこの魔性は、どんなにか強大な魔物だったか…
ワシは冷たい汗が噴き出るのを感じていた。
響『あの声は、この女だ…。封印を解いてしまったのか…? ワシが…?』
「くそっ…」
魔性「よくあそこまでたどり着いてくれた…。さすがだな」
響「うるさいっ! よくもたばかってくれたなっ!」
魔性「異なことを…。己(おれ)はたばかってなどおらぬよ。ただ、在かを教えただけ。それにお前、助かったろう?」
響「おのれっ!」
魔性「力のなくなった我の声を受け取れる者は少ない…。受けたとしてもあそこにたどり着く前に殺される…。お前はよくやってくれたよ」
響「ああ、そうだろうともさ。ワシは加賀美家が当主、加賀美 響だからな! 今、貴様も冥土に送ってやる。そこにつながれたままでは不憫(ふびん)だろう」
『とどめを刺してやるぞ、化け物め!』
魔性「哀れと思うなら、解放しておくれな。ずっとここにいていい加減、退屈だったんだ」
響「ふざけるなっ!」
響く炎:3
2007.12.31 |Category …箱庭の君 短編2
今は紅葉の季節も終わり、冬将軍が足音を立てて近付く頃。
それなのに、ひとひら。
……また、ひとひら。
誘われるようにして、ワシは力無く花びらの向かってくる方へと歩きだした。
そこで見たものは、
なんと……
響「魔性かっ!?」
なんと、開けた場所に大きな古い桜の木がぽつんと立っており、しかもそれは満開に花開いているではないか。
そして…
刀を構える。
響く炎:2
2007.12.30 |Category …箱庭の君 短編2
配下の者「跡継ぎはどうなさるおつもりかっ!?」
響「テキトーに決めてくれ」
配下の者「テキトーにってそんなテキトーなっ! なりませぬっ! 跡継ぎのお子どころか嫁もまだではございませぬかっ!」
響「…………よ……余計なお世話だ」
配下の者「余計なお世話なものですかっ! 見合いになれば逃げ出して…。遊び歩いては、姿をくらまして…」
響「今は説教の時ではないわ。早くゆけっ!」
配下の者「……………」
「わっかりました! では早々に葬式の手配を……」
響「…おいっ! 七日は待てよ、コラッ! もしかしたらひょっとして帰ってくるかもしれぬだろっ!?」
配下の者「同じかと思いまするーっ!」
遠ざかる声。
箱庭の君番外 響く炎
2007.12.30 |Category …箱庭の君 短編2
魔性の者に出会って、まず一番してはいけないことを知っているか?
それはな、話を聞いてしまうコトだ。
魔性に応えてはならぬ。
魔性は、あの手この手で心の隙をつく。
知らぬ間にだまされて、魂(タマ)までとられちまうって話だ。
…わかったか、キョー…