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いつかの子守唄~紅の花嫁:あとがきと設定
2008.10.05 |Category …箱庭の君 短編3
永遠の命と同時に永遠の孤独を手にしてしまったヲロチ。
いくら心を寄せても相手がすぐ死んでしまうワケです。
なので、扇をオトすと共に永遠の闇を生きてもらえるか聞かれます。
ハイだと「サシモ草の露」を飲んで、不老長寿の化け物になってしまい、イイエだと、「そうか、それがいい」と言って扇とのEDにはつながらなくなります。
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いつかの子守歌~紅の花嫁
2008.10.05 |Category …箱庭の君 短編3
[紅の花嫁]
己(おれ)はそのとき、誰一人血のつながらない家族と暮らしていた。
その中の一人は、嫁にゆく日を指折り数えて楽しみにしていた。
己(おれ)もそうだ。
拾ったときはこんなに小さかったのに、いつのまにか己を追い越して…って、まぁ、己は童のままであったから、追い越されるに決まってんだけどな。
ともかく、そいつぁ己を追い越して、今度は嫁に行くなとどとぬかしやがる。
めでたいじゃねぇか。己は一緒に喜んで浮かれてた。
……だから。
だから、茫然(ぼうぜん)としちまった。
いつかの子守唄:あとがきと設定
2008.10.05 |Category …箱庭の君 短編3
とりあえず、一回区切ります。
話も終ってます。
まだ続きというか話が違うけど……そんなんがあるんですが。
始めに「己(おれ)たち」を封じたのは、「須佐之男命(すさのおのみこと)」。
「己たち」は8つの首の龍…「高志野八俣遠呂智(こしのやまたのおろち)」。
本編では玄武たちが「八つ口(やつくち)」と呼んでいるのが↑コレ。
酒呑童子の親が伊吹童子で、伊吹童子の正体はヤマタノヲロチだという説の方で箱君は設定しています。
そんでもって伊吹童子は不老不死の薬を飲んでしまっていることから、この短編での語りべの“五番目の己(おれ)”は童(わらし)のまま育たなくなっちゃってるのです。
なので、扇は大人の姿だけど実は大人に化けているだけの子供だったり…
どんな姿にも化けるから、あんまり関係ないんですけどね。
いつかの子守唄:4
2008.10.05 |Category …箱庭の君 短編3
ここでも俺は同じようなことをしてたから、またそこの山の名をつけられた童子だった。
そして赤ん坊をとられてしまった己だったから、また地蔵のところに通ってた。
地蔵のところには供え物がいつもあるからな。
また赤ん坊が供えられることもあろうよ、と思ったんだ。頭がいいだろう?
そうさ、ずっと待っていたら、雪の日にまた拾った。
今度は女だった。
…だが、すぐに死んだ。
己の妖気に耐えられなかったんだな。
俺はたぶん、悲しかったんだろう。
ずっと冷たくなった亡きがらを抱いていた。
そのうち臭ってきて、部分が落ち始めたから、仕方なく捨てた。
いつかの子守唄:3
2008.10.05 |Category …箱庭の君 短編3
そんなことを繰り返している内に約束事にそって生きるのに退屈し始めた。
毎日、同じことの繰り返しだったからな。
それでやはり年頃の己だ。遊びふけることにした。
遊びたい盛りだ。まだまだ。
己はある山に住み着くことにした。
そこでまた人から巻き上げて気ままに暮らそうと思った。
…ああ、もちろん、当初の目的は忘れてなんかいない。
ちゃんと己らの封を解く鍵を探すつもりだし、あの女も必ず見つける。
今はどんな形になっていようとも見つけられる自信がある。
…根拠はないが、そんな気がするのだ。
見つけて、…そうだな…、嫁にするか考える。
己を殺す女だ。おもしろい。
他の七つが反対をするかもしれないが、それはそのときに考えるとしよう。
いつかの子守唄:2
2008.10.05 |Category …箱庭の君 短編3
それから何百年。
我らはそのまま石と化し、人々は栄えた。
我らはあのときの男神に復讐を夢見ながら昏々(こんこん)と眠る。
“そのとき”にそなえて。
この雪辱は返さねばならない。
…己らの中の誰かが思った。
例えその者がいなくなっていたとしても、血を探り出して、必ずや滅ぼしてくれよう。
…己らの中の別の誰かが、また思った。
そうそう。忘れるところであったわ。あの女もただでは済まさぬ。
…やはり別の誰かが思った。
……………………………………………………己は………………………。
箱君短編・いつかの子守歌1
2008.10.05 |Category …箱庭の君 短編3
そのとき己(おれ)は、“化け物”と呼ばれていた。
己に敵う者はなく、生き物たちはただ、ひれ伏すより他なかった。
村々の者達は己に供物(くもつ)を持って崇(あが)める。
か弱き者共にとって崇めるモノは何だって良かったのだ。
絶対的な力を有する者に畏怖(いふ)する。
神であろうと、化け物であろうと。
弱者にとっては同じこと。
怒らせないように、ただ祭り上げ、媚びへつらって、その陰で脅えて暮らす…。
伍:ふん、気に入らぬな…
壱:何、良いではないか。別に。
弐:おうよ、気にする程の存在でもなかろうが?
参:気が変われば、食い散らしてやればよい。
四:………………。
六:何を荒ぶっておる? 静かにいたせ…
七:勝手に食い物も酒も献(みつ)いでくれるのだから、放っておけばよい。
八:…我(われ)は滅ぼしたい…
水面が揺らめく。黒い、巨大な影が蠢く…。