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レイディ・メイディ 65-8
2008.09.21 |Category …レイメイ 65話
クロエ『でも……』
このままにしておいてはいけない気もするのだ。
クロエ『どうしたらいいの?』
今、今繋ぎ止めておかなくては、あの強固な心の扉は永遠に開かない気がする。
開くのは自分ではないかもしれない。
だけど、ノブから手を離したら、それさえも見失ってしまう。
人の心に刺さったトゲを抜いて癒してあげるには、どうしたらいいのだろう。
クロエ『どうしたら !』
突如、クロエの身体が白い光に包まれた。
回復魔法の訓練に集中していたクラスメイトたちが眩しさに目を覆う。
▽つづきはこちら
モーリー「ちょっとぉ~!? なぁにぃ、これぇ~?」
ニケ「!?」
優しいもやのような光は長くは続かなかったが、奇跡が残った。
クロエの足元にあった、しおれかけていた夏の花が精力を取り戻したのである。
それだけではない。
一番後ろに並んだクロエの背後には、垣根が続く。そこにこれから咲こうというつぼみたちが一斉に花開いたのである。
驚きの声が上がった。
はっとなって目を開けるとクラス中の視線が全てこちらに向けられていた。
無意識だったクロエは何が起こったのかと自分の後ろや周りを確認したが、皆が何に驚いているのかまったくわからない。
はっとなって目を開けるとクラス中の視線が全てこちらに向けられていた。
無意識だったクロエは何が起こったのかと自分の後ろや周りを確認したが、皆が何に驚いているのかまったくわからない。
表情を固くしたニケが歩み寄った。
クロエ「……ニケちゃん?」
ニケ「………………」
『これが……』
ニケはクロエの手を取って周囲を見渡した。
つぼみは満開に。
しおれた花は立ち上がり。
夏の終わりと共に力尽きて、ひっくり返った体を起こせずにいた蝉も自らの力で飛び立った。
今の力の影響か。
物凄い癒しのパワーである。
想像以上だ。
さすがはシレネを封じるために何代にも渡って強力な魔術師を婿に招き入れ続けた王家の系譜である。
しかも今のが最大出力ではないとニケにはすぐにわかった。
秘めた才能は母親以上かもしれない。
きょとんとしているクロエの背中を軽く叩いて微笑む。
ニケ「すごいじゃない、クロエ」
『それにしても突然、目覚めるとは……』
クロエ「あ、はい。……で……えっと……? 何がですか?」
ニケ「何がって……」
クロエ「す、すみません、ぼうっとしてて」
ニケ「……ハァ、これだぁ。今の取り消し!」
クロエ「そぉんなーあ」
がっくりうなだれる姫を残してニケはまた生徒たちの並ぶ最前列へとゆっくり歩いていった。
ニケ『何がきっかけであのように……? 単に目覚めの時だったとでもいうのか?』
まだ発展途上の感が否めないが、今日のように突然の爆発力ではないが、復帰してからの1週間、彼女は今回の事件前と事件後では別人のようだった。
普段の訓練での魔力が急に膨れ上がっている。
成長期に入ったからだろうか、それとも事件で危険な目に遭ったせいで力が目覚め始めたのか。
なんにせよ、もうしばらくすれば王宮に戻せるかもしれない。
リク=フリーデルスと共に。
できうるならば、稀有な才能の輝きを持ったリクとクローディア姫をくっつけたいとニケは願っていた。
姫を守る宝石が一緒になればこれほど心強いことはないからだ。
そして強い魔力の血統同士が合わされば、さらなる王家の強化につながる。
ローゼリッタ千年王国は夢ではなくなるのだ。
そこへ鎮というナイトがつけば、さらによし。
ローゼリッタという国の忠臣であり、親であるニケ=アルカイック老人は遥か未来に思いを馳せて青く続く空を見上げた。
花の都に永遠の平和を願って。
……全てが、全ての日常が静かに非日常へと流れつつあった。
まだ誰も予期しない方向へ向かって。
ゆるやかに。
力を溜め込んで。
激しくうねりを上げるその日を待ち望みながら……。
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