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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 65-7

 一方で、現在、ニケの白魔術の授業中であるクロエもまた彼女なりに今度の事件について思いを馳せていた。
 リクと同じく少なくなった学科はヒサメ先生の授業を専攻した。
 包帯を巻いて痛々しい姿だったが態度に変化はなく、淡々とした講義を進める鎮。
 2週間の休講とこのケガで生徒たちは口々に安否を尋ねたが、当人は魔物と遭遇したとだけ答えた。
 クロエとリクが同じ時期に姿がなかったことで、3人が魔物事件に巻き込まれたのだと周りは解釈しているようだ。
その中のまたいく人が一ヶ月間、片時も離れずにいた兄の存在が消えていることに気づいて指摘。
 これについて彼は、兄はもう故郷に帰った。ちょっと顔を見に来ただけだったからとごく自然に返していた。
 授業が終ってもクロエは今までのように鎮を追いかけるようなことはしなかった。
 それどころか声をかけることすらためらわれて、事件から2週間経ったというのに無事を喜ぶ会話一つも交わしていない。
 クロエの変化を敏感に感じ取ってくれる親友ステラがどうかしたのかと心配してくれたが、上手く答えることもできずにいた。

▽つづきはこちら

あの日の惨劇を思い出せば、全てを失った彼に何と言葉をかけたらいいのかわからない。
解けない呪いを抱いていて、そのせいで命を狙われていて、信じていた兄に裏切られて……
だからリクは傷ついた彼を癒すべく、今まで以上に距離を詰めるつもりでいるらしい。
けれどクロエはすぐには同じように踏み込めそうになかった。
引っかかっているのは、サエガを人間とは思えないまでに破壊したのが誰かということだ。
正直、第二の敵を望んでいた。
あまりの惨たらしい光景を前にクロエは目の前が真っ黒に。あるいは真っ白に塗りつぶされていく感覚を味わった。
それを第二の敵のせいにしてなんとかその場を切り抜けたものの、実際にはあの場に第二の敵なんかいなかったのである。
ヒサメ一族に敵対するのは鎮だけで、確かに殺し合いは避けられなかった。
避けられなかったけれど、死体を辱める必要性はなかった。
“アレ”をしでかしたのは、もちろんクロエでもリクでもない。
仲間割れでないならば、もうあとは一人しか登場人物が残っていない。
シズカ=ヒサメだ。
揺るがしようもない真実。
クロエの中に黒い戦慄が走りぬける。
あの人は本当に今までこの養成所にいたおとなしいヒサメ先生なのか?
当時、あれだけ取り乱したリクは不思議なことに今はその疑問に取り憑かれていない。
クロエからしてみればとんでもないことに、サエガは酷いヤツだったから、ああされて当然なのだと彼は開き直ったのである。
クロエの知らないことだが、リクの中ではあの血の惨劇を家族の事件に重ね合わせて意識の混濁が起こっていた。
次にあの遊ばれた死体を憎き家族の仇に置き換えた。
それは自らの精神を守るためだったかもしれない。
家族とするにはあまりに惨たらしすぎて、別の何かに置き換えなければ耐えられなかったのだ。
愛する家族から憎い相手にすり替えて、アイツはそうされて当然。もういない仇を討ったんだという擬似体験として心の中に収めてしまったのである。
もし仇が目の前にいたら、自分もそうしている。だから悪くない。当然の報いなのだ。
普通ならばありえないことだが、鎮を悪く思いたくないリクだったから、無理に当てはめたのである。
完全な現実逃避といえた。
しかしクロエはそうはいかない。
責任転嫁する矛先がない。
現実をありのままに受け入れるほか、ないのだった。
第二の敵を設定してみたものの、それが見つからなかったとなると逃げ道はない。
シズカ=ヒサメの残虐性を垣間見た。
その事実だけがグルグルと回る。
図書館にあった「ニンジャのすべて」という本では、夜空の下を誰にも気づかれることなく、颯爽と駆ける、強くてとてもカッコいい正義の味方とされている。
ミステリアスなその正体はアメーバで、細胞分裂で増える粋でナイスな不思議生命体!
……それがクロエの中のニンジャ像であった。
 ところが現実はそうじゃない。
 いくら引っ張っても伸びないし、じょうろで水をやっても色は変わらないし、フェイトが餌付けをしても増殖しない。
 それどころかヒサメというニンジャは残忍性に富んだ一族であった。
 あれでは物語の悪役である。
 残念ながら、どちらも。
 あの“死体遊び”さえなければ、悪役と正義の味方としてクロエの夢は壊れなかったのに、あれではどう控えめに見ても悪役VS悪役だ。
 もちろん、それでもクロエはヒサメ先生を支持する。
 足蹴にされながらも耐えて、這いつくばりながら助けてくれたのは他でもない、彼なのだから。
 けれどそうまでして自分たちを助けてくれる先生があんな残酷な行いを?
 命の重みを知っている、そんな人が?
 行動に一貫性が見られない。どうしても彼がやったとは信じられない。
 少なくともクロエの目にはそう映った。
 「ヒサメ先生」を優しい人だと信じて疑わないクロエには。
 実際のところ、常人とはズレ込んだ思考を持つ鎮のああいった異常行動は珍しくないのだが、彼がどのような人間であるかを知らない彼女に理解を求めるのは不可能である。
 そして理解したなら余計に彼女は衝撃を受けてしまうだろう、心に。
 氷鎖女 鎮には二面性がある。
 一方は純朴で人の良い、田舎者むき出しの穏やかな先天的性格。
 もう一方は子供の頃からの度重なる虐待と常に命のやり取りの場に身を置き、修羅の道をくぐってきた、好戦的な後天的性格と。
 いざ戦いとなれば後天的な性格が表に強く出る。
そんな彼が命の重みを承知しているとクロエが思うのはかなりの誤解である。
 鎮は命を重んじているのではなく、クロエとリクという存在に重きを置いているだけだ。
 そもそも彼に言わせれぱ、全ての命には価値がないのである。
価値はそれと対峙した者が決めること。
 ずいぶんと乱暴だが、これが鎮の持論だった。
 
クロエ『……ヒサメ先生』
 
 今までに見たことのなかった先生の顔というのを見てしまった。
知らなくていい秘密も知ってしまった。
解けない呪い。
これからどう接してゆけば良いのだろう。
離れてゆくのは簡単だ。
今まで通り、何も見なかったことにして同じ態度でいるのもいいだろう。
けれどそれでいいのだろうか?
 
クロエ『私に……私にできることがあれば……』
 
 リクは傍にいることを決意したようだ。
 それはわかる。
彼は元々、直の教え子で特別、ヒサメ先生を慕っている。
力になりたいと願うのも当然の流れであろう。
しかし自分はと考えたときにクロエは二の足を踏んでしまう。
担任はずっとニケで、師というならこのニケ=アルカイックとなる。
ヒサメ先生との関係といえば、学科の理学のみ。
それでも理学は全て彼の授業をとって3年にもなるのだから、他の先生に比べて親しい。
いや、親しいと感じているのは自分からだけかもしれないが、少なくともこちらからの好意はある。
けれど相手からはどうだろう?
やっぱり立ち入ってはいけない気がする。
他人が踏み込んでいい域を越えている気がする。

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