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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 6-5

 訓練に戻ったメイディアをわっと取り巻きたちが囲

 

「今のが、メイディア様のお母様?」

「奇麗な方ね」

「素晴らしい馬車だったわ。あんなの近くで見たの初めて」

「メイディア様、もうお嫁さんになっちゃうの?」

「メイディア様…」

メイディア「おだまりっ!」

 

 突然の怒鳴り声に場がしんと静りかえった。

 

メイディア「いちいち騒がないでちょうだい! ワタクシはお嫁になんか行きません! 薔薇の騎士になってその名を馳せることでしょう。…貴方たちもそのつもりなのでしょう?! だったら、おしゃべりしていないで練習に励んだらいかが?」

 

 苛立ちをぶつけると取り囲んでいた者たちはクモの子を散らすようにそれぞれ練習に戻っていった。

 

メイディア「フー……

 

 現場に居合わせたリクが逃げて行く連中とは逆にメイディアにって行く。

 彼の怖い物知らずは今に始まったことではないが、よくもまぁあの状態のメイディお嬢様に平気で近づけるものだと周囲は半ばあきれている。

 彼は空気を読むのが下手なのに違いない。…かわいそうに。

 

リク「やあ」

メイディア「何? 貴方もいらしたの? 見世物ではなくてよ」

 

 声をかけただけで鋭くにらみつける。声まで刺々しい。

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レイディ・メイディ 6-4

 簡単に及ぶようでは教官は勤まらないというのに本気で考えている浅はかなメイディア。

 この半年間の間にもくだらない大作戦でずっと戦っている。

 もはや理由を覚えているかどうかも怪しいくらいなのだが、とにかく一度はギャフンと言わせたいもよう。

 真剣になって考えていると呼び出しがかかった。

母親が門の前まで来ていると。

 普段なら一も二もなく追い返されてしまうところだが、今日は日曜日。

娘と面会しても良い日である。

 呼ばれた方もこの門を開けて向こう側の母親のところへ直接会いに行っても良いワケだ。

 正門の前に馬車が止まっている。

 何も知らない学徒たちが「貴族の馬車だ」と興味津々に集まっていた。

 

ジェーン「メイディア様のお母様が来てるんですって! 見に行かない?」

モーリー「行く行く」

アン「あ、うん……

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レイディ・メイディ 6-3

 試験前々日。

 

氷鎖女「あー……えっと、明日は休みだからー……まぁゆっくりすると良いでござるよ。普段の疲れをとってゆっくりするもよし、緊張を解くために遊びに行くもよし」

生徒「先生、何かポイントとか攻略とかナイんですか?」

 

 挙手して一人の学徒が質問した。

 

氷鎖女「ああ、そうだった」

 

 これまた頼りなく、ポンと手をうつ。

 

氷鎖女「んーと、諸君に教えた魔術は2種類である。それを上手く使って立ち回ると良いでござる」

ジェーン「上手く使ってって……それしかないからそうするしかないんじゃないですか。それをどううまく使ったらいいんです?」

氷鎖女「どう使うかはそれぞれ考えてくれないと。その魔法しか唱えられない状況に追い込まれたときにどうするか……そういうことに頭をめぐらせてみて欲しいでござるよ」

ジェーン「そんなぁ。無責任ですよぉ

氷鎖女「大丈夫。今まで真面目にやってさえいれば、勝つでござる。ただ、今回は単なる勝ち負けだけで成績がつくワケではないから、そこのところは勘違いしないで欲しい」

 

 勝ち負けだけではないと聞いて、いくらか安心したため息が漏れる。

 

学徒「全然ポイントになってないですよ!」

氷鎖女「ん~? じゃあ試しに拙者と(みな)とで1度だけ、実訓練をしようか?」

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レイディ・メイディ 6-2

 その頃。

学徒がいなくなった学び舎の建物の教官用会議室で、教官会議が開かれていた。

 それぞれの報告書を読み上げて提出。

 

「この報告書だとまだたったの2つしか呪文を教えていないようだけど、……どうすんの?」

 

 どう見ても12~3才の少年にしか見えないが、実は150年も生きている白薔薇教官・ニケ=アルカイックが言った。

 それに対し、氷鎖女は「何、大丈夫でござる」と額あてを触りながら答える。

 

「ずいぶんな自信ね?」

 

 そう茶化すように口を挟んだのは赤薔薇教官のナーダ=エリキシア。

燃えるような赤い髪が印象のこの女性は赤薔薇騎士団の小隊長をも努める現役の赤薔薇正騎士だ。

 同じく現役・青薔薇騎士で教官のヴァルト=グラファイト=イェーリングもそんなに甘くはないぞと付け加える。

 ぐるりと見渡してみれば、他の教官たちも同意見だというのが表情からうかがえる。

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レイディ・メイディ 第6話

第6話:初めての試験

 ヒサメ先生の授業は退屈である。

これが学徒たちの間の共通認識。

 抑揚と表情のない声が淡々と数字や理論を語ってゆく。

 声からは感情さえ読み取れず、顔はいつもの額あてで隠れており、口だけがパクパクと動いている人形のようであった。

 教え子たちと特別な関係を築こうとせず、授業が終わるやいなやさっさと教室を出て行ってしまう。

他から話しかけられなければ、自分から話しかけることはまずない。

 他人と距離を置きたがるこの先生はつかみづらく分かりにくく、学徒に人気がない。

 ときどき素でトボけているところが笑いを誘うので、嫌われているワケでもないらしい。

 すぐにしどろもどろになるので、からかうと面白い先生というだけの認識しか持たれていない、影の薄い教官だ。

 ウンコ合戦を繰り広げた時にかいま見せた裏の性格を知っている、メイディアとリクを除けば誰もがおとなしい教官だと思っている。

 彼は元々、他人にものを教える教師よりも一人で研究室にこもって没頭する研究・探求者タイプの人間なのだ。

 自分でもそれはよく承知しているつもりだった。

 彼は人間が嫌いなのではないのだが、人と向き合うことを極端に恐れている。

 できるなら、空気みたいな存在になって、人々の生活をただ見ているだけの生き物になりたい。

 それで自分は好きなことだけしてその片隅で生きていられたならそれが一番いい。

 一方で、人間社会に自然に溶け込んで皆のように普通に暮らす自分も夢見る。

 本当はそれが一番の望みだが、それこそ叶わない妄想みたいなものだった……

 遠い祖国を後にして流浪して流れ着いた先がここ、花の都・ローゼリッタ。

 この地に来るまでに残した数々の業績から、すでに氷鎖女(ひさめ) (しずか)は貴族の中でちょっとした有名人になっていたのである。

 その特殊な能力によって王宮の客人として迎えられていた彼には、別の才能を持ち合わせていた

ことを女王の知るところになり、現在の立場にある。

 他人にものを教える柄ではないと始めは断ったものの、自分の培ってきた様々なモノを自分だけで終わらせたくないという欲求から結局受けることにした。

 これは人前を嫌う彼にとってものすご勇気のいる決断だったに違いない。

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