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レイディ・メイディ 70-4
2009.02.05 |Category …レイディ・メイディ 70話
リク「………………」
ニケ「………………」
リク、呆然。
ニケ、呆れて口を閉ざす。
リク「あの~」
ニケ「ああ、えーと、あの二人は薔薇の騎士見習い時代、同期なんだよ」
リク「いや、そうじゃなくて……いや、それもツッコミどころ満載でかなり気になるけど……っていうか、俺は何のために呼ばれたんです? かなりほったらかしにされてるみたいだけど」
ニケ「うん、ゴメンゴメン」
リク「まさかこっちまで両親が違うとでも言うんじゃないでしょうね? そんな真実だったらいりませんよ?」
▽つづきはこちら
冗談ではないと続きそうな雰囲気でリクは不快な声を絞り出した。
自分の両親の子であることが何よりの誇りだ。
今更、見知らぬ誰かの子であってたまるかという思いがある。
だからこそ、クロエもいたたまれなくなってこの場から逃げ出したのだ。
ニケ「いや、そうじゃないよ。君はね、姫をお守りする役を負って産まれてきた子さ」
リク「?」
重大なことを言った、その後ろで女王とブラウドのキエェー!だの、コケェー!だのというわけのわからない奇声が飛び交っている。
リク「それはどういう意味ですか? 俺はクロエと養成所で始めて会いましたし、関係ありません」
ニケ「ご両親のことは知らないけどね。その紅い両眼が何よりの証拠なんだ」
リク「眼?」
ニケ「ソレはジュール(日の王子)とオーロール(暁姫)と言って、姫を呪いから守る魔法の石」
リク「石って……」
自らの目に恐る恐る手を当てる。
ニケ「石と言っても、形状は常に違う。いつ、どこに現れるかわからない。けど、必ず姫を守るために時が来れば引き寄せられるようになっている」
ここまで聞かされて察しの良いリクは、すぐに思い当たった。
いくら彼が妹を亡くし、クロエがお兄ちゃん子だったとして、彼女が兄に懐く様を傍から見てこんなにも懐かしく思うのはおかしい。
しかも妹と同じ年頃ではなく、自分と同い年の女の子に対してだ。
兄に懐く妹は他にも沢山周りにいたではないか。
クロエだけでなく、レイオットもアンも兄の自慢話をしていたはずだ。
なのにクロエだけが気になるのはもしかしたら、世間で言うところの恋なのかと一度は考えたこともあったが、トキメキとも明らかに違う。
何かと問われれば、保護意識という言葉がピッタリ当てはまる。
か弱いから、ではなく。
ただ、そうなのだ。
頭の中で、あるいは胸の奥底で誰かが。
見知らぬ誰かが彼に命ずるのだ。
彼女を守れ。
彼女を守ることこそ、我が使命なのだと。
リク「んー。プリンセスをお守りするための生まれながらのナイトとして運命付けられていたワケか」
ニケ「そういうことだね」
リク「ロマンチックな話だけど ……」
ぞっとするような微笑を浮かべ、仇でも睨むかのような瞳で自らの両手の平を凝視する。
リク「その宝石のために、家族が殺された」
これで全ての辻褄があった。
死した後に届いたメイディアからの手紙。
彼女の家庭教師が宝石を盗もうとして家に入った。
宝石なんてなかったあの家に。
それが不思議だった。
だが、宝石は存在していた。
こともあろうか、自分の中に!
これでは自分が賊を引き寄せ、家族を死に導いたようなものではないか。
ニケ「そのことは申し訳なかったと思うよ。もっと早くに君が魔石の持ち主だとわかっていれば良かったんだけど、相手の方が情報早くてね」
現実の辛さから逃げるために深く沈めていた感情がリクの中でふつふつと蘇ってきた。
胃の中がかき混ぜられてカッと熱を帯びてきたように感じる。
憎悪というマグマだけが目覚め、黒い炎を吹き上げて荒れ狂う。
淡々と説明するニケの声が遠くにあるように聞こえた。
リク「相手方って……」
ニケ「恐らく、シレネを崇拝する輩だよね」
リク「シレネ……! シレネなんか……伝説だったんじゃないですか?」
どうかすると爆発しそうになる怒りをこらえて声を抑える。
ニケ「非常に残念だけど、その伝説は未だ生きている」
リク「……!」
ニケ「我々は唯一、シレネの呪いから姫を守れる君を見つけ出し、保護することにした」
保護なんかいつ受けた?
自分はいつも1人だった。
両親と妹を惨たらしく殺され、一人残ったリクはとある貴族に引き取られたが、それは愛玩具としてであり、すぐさまそこを逃げ出したのだ。
それからは貧民街の孤児たちと徒党を組み、生きていくために悪いことにも手を染めた。
そんな自分を誰が保護してくれたか。
リク「……いた」
まだ長くない人生を思い返し、ふと一つの事実に行き当たる。
リク「サレア……?」
放浪の神父・サレア=フランシャイン。
孤児になり、路上で生活していたリクを「保護」してくれた人物だ。
リクは彼の元にいた短い期間で魔法と体術の基本を教わった。
いわば、恩師である。
傷ついた少年を温かく迎え、包み込んでくれたこの男にリクは一生ついていこうと決めていた。
すでに手が汚れているから、尊敬する彼を継いで聖職者になれるとは思っていなかったけれど、家族の魂を弔って生きていくのも悪くないと思い始めた頃だった。
ある日突然、彼は薔薇の騎士団養成所に行くようにと言い渡して、リクの前から忽然(こつぜん)と姿を消してしまったのだ。
捨てられたのだと思った。
……とても、悲しかった。
リク「なぁんだ。全部……」
仕組まれていたシナリオだったのか。
家族が惨殺されたことも、神父サレアと出会ったことも、薔薇の騎士になるべく養成所に入所したことも、クロエと出会ったことも。
リクの意志などおかまいなく進行する、あらかじめ据え置かれた物語だったのだ。
シレネを崇拝する狂信者がどこにでもある平凡だが幸せな家庭に押し入って、若い夫婦と少女を惨たらしく殺害しても、国家にとっては「運の良い」ことに、リクの持つ「宝石」だけは無事だったワケだ。
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●Thanks Comments
そっか...
クロエの父とベルモォォォォォォォォォール3世は同期だったんだね(^-^)
にしても、キェーとかコケェーとかどんな術なんだろう(^_^;)
リクは自分の持つ石のせいでシナリオ通りに歩いてきた人生だったんだね。
クロエを守るために.....
んでもあっぴはクロエとリクをくっつけて欲しかったりするっ(*^-^*)
ごめんよ、アン(^_-)-☆←ぉぃっ
Re:そっか...
>最終的に誰と誰がくっつくかはお楽しみに(^_-)-☆
メインキャラはだいたい、誰かしらとくっつくと思います♪
メインキャラはだいたい、誰かしらとくっつくと思います♪
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