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みやまよめな:21
2008.05.23 |Category …みやまよめな
4,
朝。
巫女が都の髪を梳いている。
都の手には、また今朝届けられていた黒百合。
都「花はいいけど……。なぜ社は姿を見せないのですか」
巫女「……それはその……」
都「………………………」
巫女が口ごもっていると、当の社が現れる。
社「姉上っ!!」
都「!! 社!?」
障子の向こうで座る気配。
社「姉上。ご無沙汰しております。社にございます」
▽つづきはこちら
都「社!! なぜ姿を見せなんだか!? 皆、女を作っただの噂をしておりますよっ」
社『……チッ!! 誰だそんな話を姉上の耳に入れたのは!?』
「お、女などとんでもございません」
ギクリとしたが、こう言うしかない。
都「お前が来てくれない間、姉がどんなにか心細かったかお前にはわかるまい。………私は外に出られないのに、あんまりです」
社「も、申し訳ございません。私にもその、色々と……」
都「馬鹿者め!!」
社「…………………………」
『相当、イラ立っておられるな』
しつこく相手をなじるなど、今までの都にはなかったこと。
彼女はいつでも穏やかで、他人ばかりを優先させ、自分はひたすらじっと耐える方だ。
こんなワガママは珍しい。
しかし社にとっては嬉しい限りである。
姉の子供じみた行動は、弟を困らせる反面、人間らしいと感じられる一面でもある。
何より、自分を頼って待っており、来ないものだからじれて怒っているのだ。
社『姉上……』 含み笑い。
都「……まぁ、小言はもういいでしょう。今日はこうして会いに来てくれたのですから」
社「はぁ」
都「入ってきなさい」
用意が済んだらしい。
社「失礼致します」
障子を開け放ち、座したまま頭を下げ、そのまま入ってくる。
都「コレは貴方ですね?」
黒百合を見せる。
社「!!」
椿の話を思い出す。
都「ありがとう、とてもキレイです」 微笑む。
社「え……、あ、まぁ……はぁ……」 あいまい。
『しかし何故、黒百合? そんなにそこいらに生えているものではないぞ?』
ふいに疑問に思う。
側の巫女に視線を滑らせるが、
巫女「ホラ、やっぱり!! 社様だと思いましたよ」
予想が当たったと喜んでいる様子。
社『違う。この娘じゃない…………』
ひとしきり、姉との時間を過ごした後、社は館中の巫女たちに尋ねて回る。
社『変だ……。全員、私の仕業だと思っている………ッ!!』
さっと青ざめた。
社『どういうことだ!?』
誰も知らないということは、他に侵入者がいるという証拠。
館を出てすぐに周囲の護衛を倍に増やす。
父「何事か、社」
社「姉上の館に不審な人影が」
父「まことかっ!? それはいかん。都は大切な娘じゃからの!!」
社「…………………」
そう言う父に冷めた視線を送る。
もちろん、父は気づかない。