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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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レイディ・メイディ 第70話

第70話:崩壊と再会
 
クロエ「お城に? 私が?」
 
 城からの身に覚えのない通達を受けて、クロエは困惑していた。
 詳しい目的も書かれていない書状を何回も見直しては目を瞬かせる。
 
1、        同姓同名の人と間違われた。
2、        気がつかないうちに何か違反めいたことをしてしまった。
3、        悪質なイタズラ。
 
クロエ「うーん?」
 
 気がつかないうちに違反めいたことをしてしまったというのは、まずないだろう。
 罰せられるにしても城に呼びつけられるまでには至るまい。
 それほどの罪ならば、城に呼ばれるまでもなく断罪されよう。
 ともすれば、
 
クロエ「やっぱり誰かと間違われたか、イタズラね」

▽つづきはこちら

 
 手紙は昨日受け取ったばかりだと言うのに、本日、午後1時に門前に迎えの馬車がくることになっている。
 断わることを前提に、宿舎を出て門へ向かったクロエの後ろから砂利を踏む音が近づいてきた。
 コンパスの長さと着地の力強さからして長身の男性であることが振り向かなくとも想像できた。
 男性はクロエの名を親しげに呼んでその進行を阻止する。
 
リク「クロエ、ちょっと待って」
クロエ「リク」
 
 友人・リクが同じ封筒をちらつかせて隣まで追いついてきた。
 
リク「また俺たちを連れて行こうとする罠かもしれない。気をつけないと」
クロエ「……あっ」
 
 これまでに何度も危険な目に遭っている。
 クロエはどうやら恐れ多くもローゼリッタの姫君と面差しが似ているらしいのだ。
 そのせいで刺客に襲われたり、さらわれたりと散々である。
 もしも一生の内に姫君と顔を合わせる機会が巡ってきたとしたら、一言、苦情を言いたい気持ちだった。
 逆に迎えに来た人間を捕らえて、目的を聞き出そうなどと柔和な顔に似合わず過激な企みを口にするリク。
 クロエもその提案を飲みかけたとき、馬車から良く見知った人物が姿を現した。
 一目で青薔薇の騎士のそれとわかる制服を着て、冬の霞んだ日差しに金色の髪を柔らかく反射させて佇んでいるのはクロエの兄・ガーネット=グラディウスだ。
 
ガーネット「誰をとっ捕まえるだって?」
 
 門の向こうで不機嫌な表情を浮かべる。
 
リク「えっと……確か……?」
クロエ「おっ、お兄ちゃん!?」
 
 リクの記憶がその人物に到達する前にクロエが小さく叫んで駆け寄った。
 
クロエ「どうしたの、お兄ちゃん? いつから悪の手先に?」
ガーネット「誰が悪の権化だ。陛下がお前らをお呼びだ。馬鹿言ってないでサッサと乗れ」
 
 アゴで馬車を指し示す。
 
リク「クロエのお兄さん、どういうことなんですか? どうして俺たちが?」
 
 当然の質問をぶつけるリクだったが、返答は素っ気無いものであった。
 
ガーネット「城へ行って直接聞くんだな。俺がこの場で答えられることは何もない」
リク「……わかりました」
 
 馬車に乗り込んで揺られながら、
 
クロエ「お兄ちゃん、下っ端なのにどうして女王様のおつかいなんかやってるの? もっと偉い人がやるんじゃないの? 実はお兄ちゃんに似た人だったりしないわよね?」
ガーネット「下っ端で悪かったな。何だ、その疑いは」
クロエ「だってリクが……」
リク「や、俺のせいにしないでよ。アレは見知らぬ顔だった場合の話であって別に……」
ガーネット「貴様か」
 
 じろりと赤みの帯びたガーネットの瞳がばつの悪そうなリクを捉える。
 
リク「違いますってば」
 
 二人はガーネット相手にあれこれと質問を試みたが、結局、城までの道のりを馬車で揺られている間、ヒントさえ与えてもらえずじまいだった。
 初めてローゼリッタ城に迎え入れられたクロエとリクは興味深げに辺りを見回している。
 
クロエ「すごい」
 
 ため息混じりに白い石垣で作られた美しい城を見上げる。
 城下町に暮らす彼女にとって外壁の外から見るこの城は見慣れた景色であったが、よもやこうして内側に入れる日が来ようとは思わなかった。
 白い貴婦人と呼ぶに相応しいローゼリッタ城は、幼かった少女クロエに実に沢山の夢物語をくれた。
 実は自分はお姫様で、大好きなお兄ちゃんと結婚してあの城の中で優雅に暮らすだとか。
 ケガをした子犬を手当てしてあげたら、魔法が解けて素敵な王子様に変身し、見初められて求婚されるとか。
 おてんば姫様が身分を偽って城から抜け出してきて、クロエと親友になり、大冒険をする。
 やがて来る姫様との別れを想像して一人、ベッドの中で泣いてみたり。
 ただの空想遊びはいくつもの物語性を帯びて時に彼女をときめかせ、時に涙させた。
 彼女がそんな話をすれば、現実の親友ステラは貴女らしいと笑ったが、きっとこの気高い城に夢を持っているのはクロエだけではない。
 その証拠に近所の友達の間では、すぐあの城に入ったことがあるだのという類の嘘が飛び交っていたし、養成所に来てからもあの城でダンスパーティーが開かれたらと女の子達の間ではよく話題に上がる。
 唯一、本当にローゼリッタ城のダンスパーティーを経験したことのあるメイディアがその手の話題の中心であり、皆は羨望と嫉妬の入り混じった気持ちを抱えて自慢話に耳を傾けるのだった。
 平民の子供たちが憧れを抱くここへとうとうクロエは足を踏み入れた。
 しかし素直な感動もそうは長くは続かない。
 何のためにどうして呼ばれたのか、まるで聞かされていないのだ。
 兄が迎えとして来てくれたから、まだいいようなものの、自分ごときが女王直々の封書を預かるのはどう考えても腑に落ちない。
 形容し難い不安がこみ上げてくるのを抑えることができず、クロエは知らず拳を握り締めていた。
 案内に従って階段を一歩一歩上がっていく。
 何故だろう。
 階段を一つ登るたびに現実が一歩遠ざかっていくような、そんな気がした。
 そしてもう、後戻りは出来ない。
 何故。
 どうしてそんなことを思うのか。
 隣を歩くリクをちらりと見上げてみたが、彼はいつものように飄々とした態で表情からは不安の一欠けらも読み取れない。
 クロエとリクという組み合わせに何かあるのは間違いない。
 それを彼は不安として受け止めるのではなく、これでハッキリするだろうと捕らえているのかもしれなかった。
 いかにも天才肌で理論的な彼らしいと思う。
 実際のところはどうかわからないが、少なくとも心細いクロエにはそのように映った。
 
クロエ『こんな変な気持ち……理由を聞かされていないからよ。きっと……ただ、それだけ』
 
 謁見の間へ近づくにつれて、増える兵士の共のせいだろうか。
歩くだけなのに周りを兵士に囲まれて、これではまるで囚人だ。
得体の知れぬ重力が彼女の足取りをいっそう重くさせる。
 もはや廊下に飾られた美術品に興味を引かれている余裕はなくなっていた。
 リクだけが時折、立ち止まっては値踏みをしてガーネットに先を促されるというようなことを繰り返していた。
 やがて細かい装飾が施された大きな扉の前に立つと緊張は頂点にまで達し、手はじっとりと濡れて気づかないうちに兄のマントを握り締めていた。
 
クロエ「お兄ちゃん……」
 
 頼りなげに助けの視線を投げる。
 
ガーネット「……心配するな。お前はお前だ。例え……」
クロエ「え? 何?」
ガーネット「行くぞ。ご挨拶を忘れるな。失礼のないようにな」
 
 言いかけたことを引っ込めて、ガーネットは開かれる扉の方に向き直る。
 質問を許さない空気に変えて。
 
クロエ「お兄ちゃん……」
 
 今、何て?
 お前は、お前。
 まるでクロエが別のものになってしまうかのように聞こえた。
 兄はやはり何か知っているのだ。
 クロエが知らないクロエの何かを。
 扉が開かれた。
 後にクロエがこれが運命の扉だったのだと思い返す、これまでの彼女を覆してしまうその瞬間が始まろうとしていた。

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●Thanks Comments

わーっ、わーっ。

とうとうクロエ女王様に会うのかな?

しかし、相変わらずクロエは笑える妄想女の子♪(*^-^*)


ガーネットを何だと思ってるんだ?

【お兄ちゃんしたっぱ】ってはっきりと。(笑)


笑えるっ☆(笑)


ゼロちゃんのところに登場しているリクがなんか好き♪(*^-^*)

From 【あっぴ】2009.03.20 15:57編集

Re:わーっ、わーっ。

>レイメイ、データがなくなってしまって、しばらく凹んで書く気が起こりませんが、必ず復活して最後まで終わらせるので気長に見ててやってくらはい(>_<)。

感想はいつも励みになってもす(^-^)vV
リクを好いて下さってありまとうなのです♪

From 【ゼロ】 2009.03.20 18:15

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