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レイディ・メイディ 第1話
2007.10.18 |Category …レイディ・メイディ 1-3話
第1話:なんか変なのがやってきた。
ダンッ!
前触れもなく机の上に飛び乗って、両腕を高々とかかげる少女が叫ぶ。
教室にいる全員の視線が注がれた。
学徒たち「エマリィ=シャトーだって?」
「名門貴族じゃないか」
「そんなところのお嬢様が何で薔薇の騎士団養成所なんかに…」
ヒソヒソと交わされる会話。
彼女の思惑どおり、まさに注目の的。
メイディア『フフ…見てる…皆、知っているのだわ。ま、当然ね。エマリィ=シャトー家を知らないお馬鹿さんなんているハズがないもの』
フンと軽く鼻を鳴らして、誇らしげに笑う。
メイディア「ワタクシとこうして同じ屋根の下で学べることを光栄に思いなさいっ! オーッホッホッホ♪」
小指を立てた手を口元にあてて高笑いするのは王家の遠い親戚にあたる名家の令嬢メイディア。
?「そこの立派なごーるでん巻ぐそ。文机から降りるでござるよ」
大勢の驚きの視線を一身に受けていた彼女にサックリ突き刺さる声。
同時にあっけにとられて彼女を見ていた人々の目もそちらを向いてしまう。
メイディア「ゴッ…ゴールデン巻…」
縦にクルクルと巻かれた金色の髪に手を添える。
メイディア「ゴールデン…なんですって?」
ぐぎぎ…。ぎこちなく首を回した先には黒ずくめの少年がドアの前に立っていた。
少年?「“ごぉるでん巻きグソ”」
メイディア「……!!」
カッチーン☆ 怒りに体を震わせる。
ここで黄金の巻…ナントカと揶揄されるのは、自分の縦に巻かれた自慢の金髪…通称・縦ロールしかないではないか!
▽つづきはこちら
周囲はハラハラと成り行きを見守っているだけだ。
少年?「一介の学徒にクビにされる覚えはナイでござる」
メイディア「なっ!? 一介の…? ワタクシが…? エマリィ=シャトーの…」
少年?「ここ(養成所)では“えまりい・しゃとぉ”だろうが、“鈴木”だろうが“斉藤”だろうが関係ないでござるよ」
後ろ手に木製のドアを閉めて、少年は教壇へ上がった。
目をしばたかせる生徒達に向かい合い、
少年?「初にお目にかかる、皆の衆。拙者(せっしゃ)、氷鎖女(ヒサメ)と申す者。本日付で黒魔術を指導する教官とあいなった。学問の方も理・数学、戦術全般を担当させていただく。よろしく頼む」
メイディア『きょ…教官ですって? アレが?』
黒ずくめの少年をつま先から頭のてっぺんまで観察。
自分よりもだいぶ低い背。狭いなで肩。
額当てをしているために目の辺りが隠れてしまい、素顔をうかがい知ることはできないが、輪郭やアゴの細さからしても…
メイディア「…ハッ!?」
教官の事よりももっと重大な事をとっさに思い出した。
そう、今、教官を名乗った男は何と言った?
メイディア「そこのアナタっ! アナタが本当に教官なのかはとりあえず置いといて…。早速、質問ですわ!」
氷鎖女「?」
メイディア「今…黒魔術と言いました?」
氷鎖女「さよう」
メイディア「…そう。では失礼したわ。ワタクシ、白魔術を習いにこの養成所に来ましたの。どうやら教室を間違えてしまったようですわね。ワタクシとしたことが。ごめんあそばせ」
机から飛び降りると、靴音を響かせて退室しようとする。
氷鎖女「待たれ、ごーるでん」
メイディア「……」
青筋、ぴきっ。 勢い良く振り向き、鋭く睨みつける。
メイディア「ゴールデンと呼ぶのはおよしなさいっ!」
氷鎖女「しっ…しかし…髪が…こう…クルクルッ☆…と…」 おずおず…
メイディア「巻いているだけで変なモノを連想しないで下さる!? こんな侮辱は初めてですっ!」
怒りに任せて足を踏み鳴らす。
氷鎖女「うん。すまんでござる。ついその形状が…や…ともかく、ごーるでんはこの部屋で良いのでござるよ」
メイディア「だぁかぁらっ! ゴールデンって呼ぶなっちゅーのっ …あ、ゴホン。…い、いえ。清らかで可憐で高貴で美しいワタクシには白しかございませんわ。書類にも白と明記致しました。そちらの手違いです」
自慢のごーるでん…否、金の巻き毛を優雅に払う仕草で余裕ぶる。
これ以上、自分のペースを乱されるのは我慢ならない。
氷鎖女「いや。先に行われた入学試験でお主は、白魔術を操れる要素は一切なく、黒魔術向きの能力をそなえておるという結果が出てござる。よって、お主は黒魔術を学んで黒薔薇のサムライ…あ、じゃない…騎士を目指すことになるでござる」
メイディア「希望が通らないのであれば、ワタクシ…ッ」
氷鎖女「出ていきたくば、構わんでござるよ。家元に帰るがよろしかろう」
メイディア「うぐぐ…」 下唇をかみしめる。
薔薇の騎士団。
それはここローゼリッタ王国を代表する最強のエリート騎士団である。
正騎士になることができれば元の身分に関係なく、正式に騎士の称号と身分を保証される。
それを目当てに各地から多くの希望者が殺到するこの薔薇の騎士団養成所は、入学するだけでもすでに狭き門となっているのだった。
登録すれば養成所に通えるワケではなく、入試試験が待っている。
ふるいにかけられてクリアできない者は、その場で騎士を目指す道が途絶えるのだ。
どんな事情があろうと、どんなに遠くから足を運んで来ようと関係なく締め出される。
募集時期が開始されて、養成所に残るのは10分の1に満たない。
そして残った10分の1の人数も厳しい訓練と試験について行けず、どんどんと減ってゆくのである。
最終的に見事、正騎士にまで昇りつめられるのは、わずか一握りに過ぎないという。
ひどいときには誰一人として残らない年もあるらしい。
それでも男子ならば、脚光を浴びて華やかな軍隊に憧れて入隊希望する者も多くいようが、女子の、しかも貴族の娘が騎士を目指そうなどとはなかなか耳にしない話だ。
そもそも親が許すはずもない。
公爵家の親戚にあたるエマリィ=シャトー家の令嬢・メイディアも同じなのだ。
両親がそんな真似を許すあろうハズがない。
勝手に家を飛び出し、勝手に申し込んで、勝手に試験を受けて現在に至る。
彼女にはおいそれと帰れない理由があった。
メイディア『今戻ったら、嫁がされてしまう…』
…そう、齢15歳で遠い地へ嫁に行くことを決められてしまったのである。
自分の知らないところで縁談が進められた彼女は、一度入学してしまえば養成所が管理する宿舎生活になり、どんな権力者であろうと外からの干渉を受けられないこの養成所を隠れ家に選んだのだった。
メイディア「うぐ…よ…よろしいでしょう。今しばらくは黒魔術を学ぶことで我慢してあげまます。でもきっとそのうち気がつきますわ。このワタクシに、いかに純白の薔薇が似合っているかということを! 覚えてらっしゃい!」
数週間にもおよぶ検査や試験をくぐり抜けて、ようやく騎士候補生(見習い)というスタートラインに立った1日目。
同じ教室に机を並べていた少年少女たちは思った。
“なんか変なのがやって来た”…と。
常識を知らないワガママお嬢様の騎士団見習い生活。
波乱必至の幕開けである。
●Thanks Comments
ゴールデン巻きうんち
巻きまきうんちちゃんとヒサメの二人は、まさかカップル候補生!?
スタートから飛ばしてて続きが楽しみです(^-^)/
画像がアップされてる!!(驚)
金魚たん…(*^^*)
無題
うわー、読んでくれてありまとう(-^∇^-)
久々の人に読んでもらうと緊張しマッスル。
読みづらいとかあったら、言ってくらはい。
ヨロシクでつ。ぺこり。