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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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艶街の花 2

 ホラ、ちゃんと見てよ!

 って、ああ、字が読めないんだった。

あはは、そういうあたしも。

 でも一晩買ってくれた商人のおじさんに読んでもらったのよね。

 身分は関係ないんだって!

 薔薇の騎士の称号を手に入れたら、世襲できない一代きりで名前だけだけど、ナイトの位がもらえるんだって!

 貴族のはしくれなんだってさ!

 すぅーごーい☆

 これはこの生活から抜け出せるチャンスじゃなーい?


▽つづきはこちら

 例の通り、ママは止めたけどね。

どうせ文字すら読めないあたしなんかじゃ入所試験も通らないよって。

 でもあたしは賭けることにした。

 あたしだって、入所試験に通るなんてまで思ってやしなかったけどね。

でも長い人生、一度くらいは夢のために行動してもいいんじゃないのって思ったの。

 もちろん、それだけじゃないよ。

試験場に行けば本物の騎士がいるだろうし、そこで見初められたりしちゃったら、タナボタじゅない。

ラッキーはどこに落ちてるかわかんないものよ。

 あの町の裏側には落ちてない幸運があそこにはある気がするの。

 考えるだけで胸が躍るわ。

うふふっ。

 ママは最後まで反対してたけど、服を売って路銀を工面してくれた。

 あたしはママの宝物だから、反対したのはきっと手放したくなかったのよ。

でも最後はちゃんと協力してくれる。

だってあたしはママの宝物だから。

 

あたしら娼婦は日陰に咲く花。

あたしは入所試験に合格する。

そうしてこの日、あたしは日陰の花を卒業した……

 

「ねーえ、何読んでるのォ?」

 

 ひとなつっこいあたしがのっしりと手紙を読んでニヤつくシラーおぶさる。

 

「待ってました、お手紙」

 

 シラーが会心の笑みで答える。

 

「いいな、いいな~。私んトコのママン、手紙よこしてくれたコトないんだよー」

 

わざと甘えた声でグズると「それは寂しいわね」ってとってつけたようにシラーが言った。

 

「…なーんて☆ ウチのママは文字の読み書きできないから、無理なの知ってんだけどぉ~。アハハッ♪ 薔薇騎士なれてもなれなくてもとりあえず、家に帰ったら文字でも教えてやろっかな~」

「うん、それっていいんじゃない?」

 

 仲良しの友達、ジェーンが手放しで賛成してくれた。

 ママはいつだってあたしのことを想ってる。

今もこうしてお金もないだろうに、あたしが養成所で苦労してるんじゃないかってなけなしの生活費を送ってくる。

たぶん、お客さんに頼んで送ってきてくれてんだと思うの。

ここはご飯タダだし、眠るところに苦労はしないし、皆いい人ばっかだし、一生養成所内でもいいと思えるくらい。

ママったら、借金してこれをあたしに送ってるんじゃないといいけども。

 あたしが薔薇の騎士になれるかどうかはまだわかんない。

勉強は難しいし、成績もあんまり良くないから。

でもなれなくてもいいんだ。

その前にここでいいヒト見つけてくっついちゃうから☆

中には一人くらい、あたしでもいいって言ってくれる人だっているハズよ。

こんなにひとっ処に似たり寄ったりの若い男女がいるんだもの。

物好きがいてもいいハズ。

皆、将来の希望に目を輝かせちゃったりする、恥ずかしい青春野郎共なんだから、イキオイでいくとこまでいっちゃえばなんとかなるわ♪

メイディアじゃないけど、そんなステキなダーリンが現れてくれなくても、あたしは平気。

ここで習ったことは騎士になれなくたって、これから生きてくのにすごく有利。

はるばる来た甲斐はあったのよ。

無駄なんて何一つない。

町を出る前のあたしには娼婦になるしか道はなかったわ。

でも今は違う。

文字が書ける、魔法を知っている、仲間のつてだってちょっとはある。

ママの知らない日の当たる世界にあたしは行くことができるの。

だからねぇ、ママ。

少し待っててちょうだいよ。

あたしが日陰から日向に引っ張り出してあげるから。

それであたしとママは二人で一緒に暮らすんだ。

おなかいっぱい食べ物食べて、ふかふかのベッドに大の字で寝て、新しい服を着て、化粧品を買ってあげて、立て付けのしっかりした、雨漏りなんてしない家に住むの。

どう?

ステキでしょ?

どうせだったら、夢を見なくちゃ。

夢見るだけはタダだから。

 

日陰の花に、きれいな水を。

日陰の花に、日の光を。

 

レイディメイディ番外
モーリー編
艶町の花
 終了

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