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ゼロのノート

ト書きでカンタン☆ 気楽に気軽に創作物語。

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妖絵巻番外 1番の価値。:12(終了)

「もしかして……アタシの……せいですか?」
「ははっ。なんでそこでお前が出てくるかな。……違うよ」

 先生は頭を軽く下げて少しだけ笑った。

「どうして別れちゃったんですか?!」
「ま、色々と」
「浮気してたから!? そうでしょ? そうなんでしょ!? アタシ、見たんだから!」

 アタシの思いやりのない追撃に先生は怒るでもなく穏やかにこう切り替えした。

「浮気じゃないって。他に好きな人が出来ただけさ」
「そーゆーのを浮気って言うんです!!」

 どこまで先生は間が抜けているんだろう!
 他に好きな人が出来たって、婚約して来年結婚しようって人がよくも……
 それを浮気と呼ばずして、何なわけ!?

「自分に意思があるように、相手にも意思があって考えて動いているんだから、そういうこともあるさ」
「追いかければいいじゃないですか! 本当に好きなら!!」

 思わずアタシは叫んでしまった。
 思惑通りになったはずなのに。

「本当に好きなら……ね」
「そうですよ!」

 瞳のヤツを応援するわけじゃなくて、2度も想いの人を手放す先生が歯がゆいの。

「ははっ。アツイなぁ、オマエ」
「当たり前です!」
「……話し合いはしたよ。でも……いや、まぁいいや」

先生を呼ぶ、生徒の声が遠くに重なって聞こえた。
先生が反応して顔を上げる。

「……ああ、おしゃべりしている場合じゃなかった。そろそろ行かないと」

 アタシがつかんだ手をするりと抜いて、先生は背中を向けた。
 


▽つづきはこちら




奇遇だな。俺も自分が好きじゃないよ。




 ずっと何年も昔のこと。
 先生が自分を好きじゃないって言っていたことをボンヤリ思い出した。



たぶんだけど……
一番認めてもらいたい人から、存在を認めてもらえたら、変わるんじゃないかな。




 また、認めてもらえなかったのかな。
 ううん。
 そうじゃない。
 アタシが……
 アタシがいるよ!

「先生!」

 小さくなっていく背中に向かって叫んだ。

「アタシの中では、先生が一番だよ!」
「……?」

 何のことだという風に先生が肩越しに振り向いた。
 アタシは大きく夏の空気を吸って胸を膨らませ、吐き出す息と共にもう一度叫ぶ。

「先生が一番認めて欲しい人に認めてもらえてなくても、アタシが認めてあげる! アタシが一番をあげる!」

 先生はキョトンとしてた。
 それからゆるく笑って、

「ははっ。なんだ、慰めてくれてんのか? そりゃドーモ」
「先生、アタシと付き合おう! 世界で一番、幸せにしてあげるよ!!」

それは昼下がりの人気のない敷地内に大きく響き渡り、先生の整った顔から笑顔を消し去った。
 先生はアタシが女であったことをずっと置き忘れてて、彼女がずっとアタシのことを女だと言ってたのに、それでも失念してて。
うっかりとぼけた先生は今頃になってようやく、アタシが女の目で先生を見ていたことを知る。
ううん。
本当は、先生もわかっていたでしょ。
どこかでは、きっとわかってた。
だから、アタシを子供の範囲に押し込め続けた。
……アタシを受け入れるつもりが初めから一切、なかったから。
恋のベクトルは。
向かない方向には、どうしたって向かない。
例えば、そのヒトにあのヒトがいなくても、決してこちらには向きはしない。
そう、先生は言ってたよね。

「……悪い」

 ああ、やっぱり。
 さっと笑顔が消えたから……
 わかってたよ。そんな返事が来るだろうって。

「……ちょっとー。少しは考えてみてから返事してよ。せめて明日まで待ってとかさ。即答はヒドイよ、先生」

 アタシはおどけて見せたけど、先生は笑わなかった。

「ありがとう」

 真っ直ぐに向き直って、姿勢正しく。
 ごまかしを挟まずに、きりりと答えて頭を下げるとそれっきり。
 今度こそ。
 本当に振り向いてくれなかった。
 アタシは風景画を切り抜くように、両手の親指と人差し指で四角を作るとその中に先生の後姿を納めた。
夏の光に白いシャツが光って見えて、綺麗だった。
眩しくて、眩しくて。
目に痛くて、涙が、止まらなかった。
このまま切り取って、連れて帰ってしまいたい。
アタシの長かった片思い。
アタシの一番が先生の自信に少しでもつながってくれますように。
アタシの一番で、自分が好きになれない先生が、少しでも貴方を好きになれますように。
できれば、アタシを時々思い出してくれますように。

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●Thanks Comments

いい話だった…!

いいコだね…ひたむきで。
最後の終わり方良かった!
今までで一番少女漫画?少女小説してた!
思春期の女のコの気持ち的なとこがすごくよく出てて、好きな作品になった~。

ナナメ読みでちゃんと読めてないので、あとでもっかいじっくり読みたい(>_<;)
ゆっくり時間かけて。
完結までお疲れ様でした~。

From 【ぱんだ(P)】2009.11.25 22:33編集

Re:いい話だった…!

わー、感想ありまとうございます!(`・ω・´)ゞビシッ!!
うっかりホラーに流れそうなのを頑張って食い止めて、少女漫画(小説)目指しました!(笑)
文絵、苦手で疲れたYO!(^_^;)

From 【ゼロ】 2009.11.26 00:10

ホラーって何だ!?(爆)

お疲れ様でしたー!
何だかきゅんとする良い話でした。
でも文絵なら、きっと前に進める気がしますー。
しかしやはり和は和です…絶妙な斬りっぷりが何か好きだ(笑)
…というか、彼女役の瞳がリアルにいそうで怖い(´・ω・`)

From 【秋月悟】2009.11.26 17:23編集

Re:ホラーっていや、あの……えへ(笑)

瞳、リアルにいそうですかね(笑)
嬉しい感想、ありがとうございました。ぺこり。
和はええ、やっぱり成長してても所詮は和ですカラ(^_^;)

From 【ゼロ】 2009.11.26 21:28

面白かったです

瞳もそうだけど文ちゃんもすごく自然でいそうやと思いました。感情移入しやすかった。

和、いつか本当に好きになれる人見つけるんだぞ(≧ヘ≦)

From 【希】2009.11.27 03:55編集

Re:面白かったです

わ~、ありまとうですー!
しかし書いている自分は感情移入できなくて、あくせくしとりました(死亡)

From 【ゼロ】 2009.11.29 11:06

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