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レイディ・メイディ 69-4
2009.01.31 |Category …レイディ・メイディ 69話
報告書を受取ったニケは白い竜に乗り、ローゼリッタ城を目指した。
城に到着するや腹心の家臣が彼の帰りを待ちかねていたように駆け寄る。
白竜の翼は家臣の白髪と髭、長いローブを激しく煽って、静かに芝の上に着陸した。
家臣「ニケ様!」
ニケ「届いたか」
首を垂れて竜が主を背から下ろす。
齢を重ね、すっかり腰も曲がった老家臣は、80年前と変らない少年の姿を保っている小さな師に手紙を握らせた。
密かにゼザ=マグディナスに送らせていたものである。
女王に会う前に家臣の部屋を尋ね、そこで手紙を開く。
ニケ「変ったところはないようじゃな、今のところ」
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レイディ・メイディ 69-3
2009.01.31 |Category …レイディ・メイディ 69話
2週間ののちにワイズマン公爵領・エグランタインに潜入している青薔薇小隊長ジャックとコンタクトを取った同じ階級のレティシア、ジョゼット両名からの報告書は、上官である中隊長ヴァルト、ナーダに渡り、そこから直接、間を飛ばして国立十二賢者の一角を担うニケの下へと届けられた。
本来ならば、薔薇の騎士団内で順を踏んで提出され、中身を確認された後にようやく十二賢者に渡るはずだ。
この場合においても無論、十二人全員に公開されなければならない。
しかし、ニケは二人の中隊長に敢えて手順を省略させた。
規律は守るためにあり、上に立つ立場の人間が公然と無視してしまっては、組織が成り立たなくなってしまう。
賢人ニケとあろう者が自らそれを破ることは忌避するところであったが、今回ばかりは内密に済ませたかった。
ダンラックの息のかかった者が内部にいるかもしれないことを恐れたのだ。
レイディ・メイディ 69-2
2008.12.09 |Category …レイディ・メイディ 69話
猟犬どもが足元を嗅ぎ回っているその頃、嫌疑をかけられている当の本人は広い部屋の中いっぱいに肥大した“肉”の中に埋もれていた。
ダンラック「少々、太りすぎましたかねぇ?」
そうつぶやく顔は中央に位置しており、自身の贅肉の中に埋もれて生臭い息を吐いた。
備え付けの家具などは肉に埋没してどこにも見当たらない。
ひょっとしたら圧力で壊れてしまっているかもしれなかった。
自身の短い足もすでに床には届いておらず、宙に放り出されたままだ。
どうやれば人間がここまで肥大化できるのか。
いや。人間ではない。彼はとうに人間ではなくなっていた。
ダンラック「さすがにこれはダァイェットしなくっちゃ、シレネ様に嫌われてしまうかもしれません」
陽気な声を口に出して言うとダンラック公爵は、体を揺すり、己自身の肉を波打たせ始めた。
どのくらいそうしていただろうか。
何と、肉は本体から分離して、一つの塊となった。
それはもう一つの命を持って脂肪だけで構成された魔物と変化(へんげ)する。
ダンラック「おっほぅ。カワイイ私のジュニアちゃんのできあがりでしゅね」
肉の魔物は窓を突き破って這い出すと夜の闇にその存在を溶かした。
部屋に残ったのは、短い足をようやく床につけることのできた、やっぱり太り気味の老公爵1人。
それと肉の圧力によって無残に破壊された家具と。
レイディ・メイディ 第69話
2008.11.09 |Category …レイディ・メイディ 69話
第69話:猟犬は集う
薔薇の騎士団本部から派遣されてきたウイングソード小隊長は、ワイズマン公爵と黒き13番目の魔女シレネを祀る教団との関係を暴くためにエグランタイン領に潜伏。
現在はとある町のとある酒場を集合場所に選んで彼らは合流を果たした。
ジョゼット「……これを」
ウイングソード小隊長……ジャックの同期の赤薔薇騎士・ジョゼット=マリッチが麻の袋を卓上に置いて押し渡した。
室内を頼りなく照らすランプの明かりが隅のテーブルに陣取った4人の影を大きく壁に映し出す。
4人はそれぞれ、襟の高い外套を羽織り、会話する口元が他から見えないように気を使っている。
酒場の客の中に敵の手の者がいないとも限らない。
いくら声を小さくして酒場のざわめきに隠そうとも、唇の動きで会話内容を知られては元も子もない。